ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■漱石と鴎外と太宰と藤村の「著作権ビジネス」
福田:そういえば、村上春樹ってスゴイんだってね。海外出版物の著作権の管理って、当然、講談社がやってるんだと思ったら、早々に、講談社とまったく関係のない、海外のエージェントに任せてるんだって。だから、海外でどんなに春樹が売れても、講談社インターナショナルには、一文も入らないんだって。

坪内:著作権で一番恩恵を受けたのはさ、太宰治の遺族だよね。

福田:それはそうだね。

坪内:太宰は生きてるあいだは全然、売れなかったんですよ。「せめて1000部売れたい」みたいな人ですよ。それが、亡くなって人気急上昇でしょ。太宰の長女の津島園子さんって今、代議士の奥さんで、早稲田の文学部卒業なんだけど、1960年代に真っ赤なスポーツカーで大学にね。なぜか遺族は、印税で真っ赤なスポーツカーを買うよね。澁澤龍彦の未亡人も真っ赤なポルシェかなんかでしょ。

福田:まあ、作家の遺族なんて、あんまりいいもんじゃないですよ。

坪内:三田誠広だって、息子がピアニストとして自立して、ってエッセイで書いてるわけじゃない? じゃあ遺族に死後70年間もお金を残す必要ないじゃない。

福田:というか、そこに照れがないのがコワイよね。なんか、「オレも死んだ後で少し売れるかしら」と……ちょっとぐらい思うけど……口に出すのは恥ずかしいよね。そんなことはさあ、言わないよ普通。少なくとも文章書いてるぐらいの人間なら。恥ずかしい。

坪内:死後50年だと忘れられてるけど、70年目に発見される、そういう作家だという自負心なんじゃない?

福田:50年といえばスタンダールですよね。生きてるあいだはまったく売れなかったから、死ぬときに「50年後、俺は発見される」と断言して。生前、バルザックやミュッセにはかなり評価されたけど、あとは評価されなかった。それが50年後に『赤と黒』が売れ出して。

坪内:むしろ、70年後に爆発的に売れそうな、西村賢太や中原昌也さんが言うなら、三田誠広より説得力あるよね。】

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 いやもう、三田誠広さんは酷い叩かれっぷりなのですが、('77年に芥川賞を受賞した小説家)なんて名前の後に説明が加えられる時点で、もし著作権が70年に延長されても、三田さんには「実益」はほとんど無いのではないかと思われます。もちろん、太宰治やカフカやスタンダールのように死後あらためて人気作家になる可能性はゼロではありませんが、そういう「奇跡」の可能性と作品そのものが「歴史的に生き残れる確率」を考えれば、50年でも長すぎるのではないかと僕も思うんですけどね。

 ただ、50年前の作品なんてほとんど読まないだろ、と思っていたら、つい先日読んだ井上靖さんの『風林火山』は1955年刊行だということに驚きました(井上さんが逝去されたのは1991年)。この作品が今回大河ドラマの原作となったことで、現著作権者の方々には、かなり金銭的に大きな見返りがあったのではないでしょうか。作品自体も「古さ」を感じさせない素晴らしい小説です。ジャンルによっても違うのでしょうが、読まれ続けている人気作家の場合、「50年」と「70年」では、けっこう大きな差が出ることもありそうです。
 まあ、三田さんの場合は「日本文藝著作権センター理事長」だそうなので、もしかしたら「立場上仕方なく」著作権延長を主張されているのかもしれませんけど。

 それにしても、このお二人の対談記事を読んでいて驚いたのは、歴史に残る作家たちの「著作権意識」についてでした。

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03月06日(火)
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