ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「ミッキーマウスの保護」と「星の王子さまの解放」と
 去年、『星の王子さま』の新訳本が多くの出版社から一度に出たのは、こういった「事情」があったのですね。あの「新訳本」で初めてこの作品に触れたという人も、かなり存在したのではないでしょうか。しかしながら、同じように著作権の保護期間が切れてしまった作品というのは、それこそ毎年「星の数ほど」あるにもかかわらず、『星の王子さま』のように「保護期間終了後も商品として価値があると判断される作品」というのは、非常に希少なものなのです。福井さんは、【50年後も経済価値を維持できる作品は全体のほんの2%であるという指摘もある】と書かれているのですが、この「2%」ですら、かなり贔屓目の数字なのではないかと僕には思われます。現在書店に並んでいる本のうち、50年後にまだ商品として売られている作品なんて、今すでに定番になっている「名作」を除けば、ひとつの棚に一冊あれば良いほうなのでは……

 この度重なるアメリカの著作権延長は、「ミッキーマウス保護法」などと陰では言われているそうです。まあ、確かにディズニーにとってはミッキーマウスがパブリック・ドメインになってしまってはたまらないのでしょうが(もちろん、アメリカという国家にとっても非常に大きな「特産品」ですしね)、そのディズニーも、「人魚姫」や「白雪姫」のような「先人の作品」をアニメ化して繁栄してきたというのは皮肉な話です。「産業」になってしまえば、スタッフの生活もかかっているわけですし、クリエイターとしての矜持のために「じゃあ、みんなのものにしよう」というわけにはいかないというのもわかるのですが……
 ただ、その「ごく一部の作品」のために、「お金なんて要らないから、少しでも沢山の人に見てもらいたい」と作者本人も考えている作品がそのまま埋もれてしまう結果となっていることも事実です。著作権というのは、「相続人全員の共有」というのが原則なのだそうで、この「保護期限」が切れる前の作品を世に出そうと思えば、相続人全員の許可が必要になります。50年近く前の作品ともなれば、それこそ当事者すら知らないような「相続人」を探し回ったりしなければならない場合も出てくるわけですから、やっぱりそれは、かなりの「計算」ができるような有名作品でもない限り、「ワリに合わない」ことなのです。もし「著作権が永遠のもの」になってしまえば、それこそ「埋もれた作品」を発掘して紹介するのは、ほとんど不可能になってしまうのです。だって、100年前に亡くなった無名作家の「相続人全員」なんて、いくら少子化が進んだ社会でもそう簡単には探せませんから。

 「商品」にならないような作品は、もうすでに「無価値」なんだよ、と割り切ってしまうというのも、ひとつの考え方なのかもしれませんが……

 

09月29日(金)
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