ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■「西原理恵子」の幻影
 僕がゲッツ板谷さんのことをはじめて知ったのも、西原さんの漫画の中でした。今では板谷さんも売れっ子ライターであり、初小説『ワルボロ』も高い評価を受けているのですが、僕にとっても昔の板谷さんが、「西原理恵子の取り巻きライター」のような印象だったのは事実です。書かれていた雑誌も、ギャンブル雑誌がほとんどでした。
 冒頭でゲッツさんは、【かなり減って、「サイバラ言及率」は全体の1〜2割】と書かれていますから、おそらく数年前までは、過半数くらいは「西原理恵子」の名前がメールやファンレター中にあったのではないでしょうか?それはやっぱり、クリエイターとしてのゲッツさんにとっては、必ずしも喜ばしいことではなかったはずです。もちろん、西原さんの力添えがきっかけで「人気ライター」になれたのだと頭では理解していたとしても、やっぱり、「オレは西原理恵子のオマケか!」というような気持ちになったことだって、あったと思うのです。
 それにしても、西原理恵子さんの、この板谷さんに対するフォローというのは、極めて珍しいものだと思うのです。まあ、世間には「名コンビ」と言われる作家と挿絵画家というのは沢山いるのですが、その多くは「お互いにプロになってから知り合ったコンビ」であり、「無名時代からの知り合い」が、ずっとコンビを組んでいるパターンというのは、ほとんどないはずです。ましてや、長い間板谷さんの文章は、「売れっ子漫画家、西原理恵子のヒモ」みたいな存在だったわけですから。もちろん、西原さんだって、板谷さの才能を評価していたのだとは思うのですが、それでも、西原さんには、板谷さんのことは放っておいて、もっと有名で「本が売れる」ライターと組むという選択肢は、いくらでもあったはずなんですよね。
 でも、その一方で、この西原さんの「情の深さ」が、たくさんの人をダメにしてきたというのもよくわかります。それは、けっして西原さんが悪いわけではないのだけれども。
 板谷さんはそんな人たちをずっと見てきて、いつか自分はそうなってしまうのではないか、という恐怖感もずっと抱いていたのだろうなあ、という気がします。
 ここで紹介されている西原さんから板谷さんに送られたFAXを読んで、僕も西原さんの優しさと気配りに涙が出そうになりました。西原さん自身もキツイ状態のときだったはずなのに。
 ただ、この手紙を読んで、こんな優しすぎる人に圧倒的な力で庇護されているというのは、ある意味、ものすごく辛いものだろうなあ、と感じたのも事実なのです。
 誰のせいでもなく、「優しさ」が、かえって行き場を無くしてしまうことというのも、この世界にはあるのかもしれませんね。

04月10日(月)
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