ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
[10028028hit]

■今は、観客が許さないんです。
 このあと、鴻上さんは、「問題は、通路の幅ではなくて、避難手順じゃないか」と書かれています。でもたぶん、鴻上さんが悲しんでいるのは、50cmとか90cmとかいう問題じゃなくて、「観客の質」の変化に対してなのではないか、と僕はこれを読んで感じました。
 鴻上さん自身も「強弁」と書かれているのですが、「余裕があったほうが、いざとなったときに安全性が高い」のは事実ではあるのですよね。もし火事とかで場内がパニックにでもなれば、その50cmと90cmの差で、命を落とす人だって出るかもしれません。
 でも、送り手として「観たい人がいてくれるなら、ひとりでも多くの観客に観てもらいたい」という鴻上さんや劇場スタッフの気持ちや「補助席でもいいから、舞台を観たい!」という演劇ファンの気持ちも、僕にはわかるのです。僕も舞台は好きですし、よほどメジャーなものでなければ、演劇というのは、公演終了後に観ることはできません。演劇というのは映画以上に、「観客としてその場にいること」に意義があるものだと思うのです。舞台演劇がビデオ化されたものをいくつか観たことがあるのですが、やっぱり、生の舞台の熱気や緊張感とは全然違うものだし。
 これは本当に難しいというか、立場によって答えが変わってくる問題だと思います。送り手や劇場スタッフからすれば、「ひとりでも多くの人に観てもらいたい」のは当然だし、チケットが取れなかった人にとっては、「通路でもいいから、なんとか観たい」はずです。でも、すでに自分の席がある人にとっては、「いざというときに、自分の安全が脅かされるようなのはイヤ」なのも当然です。上演時間なんて2〜3時間くらいのもので、その時間内にものすごい自然災害に遭遇する確率というのは非常に低いと考えて良いでしょうが、だからといってお客さんを一杯一杯に詰め込んでしまって、その「万が一」のことが起こってしまったら、どうしようもないし…

 ただ、少なくとも「自分がちょっと危険になってもいいから、他の人にも見せてあげよう。同じ演劇ファン同士なんだし」というような、「連帯感」が薄れてきているのは間違いないようですね。
 これって「演劇ファン」に限った話ではなさそうだよなあ。

12月18日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る