ID:60769
活字中毒R。
by じっぽ
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■通天閣のおばあちゃんの決めゼリフ
 たぶん、このおばあちゃんも40年の間、「どうしたら売れるんだろう?」といろいろ工夫はされたのだと思うのです。それこそ、煩いくらいにお客さんに話しかけたこともあったでしょうし、逆に、声をかけないようにしたこともあったに違いありません。その結果が、この「どうしましょう」のひと言ですからねえ…多くのお客は、これがおばあちゃんの「決めぜりふ」であることすら知らないまま、「じゃあ買うよ」と言ってきたのでしょう。逆に、あんまりしつこく売りこまれたりするとかえって「買っても大丈夫かな?」なんて思ってしまうかもしれないし。
 そして、この「どうしましょう」のタイミングもまた、ひとつのテクニックで、齋藤さんが仰っているように、「絶妙なタイミングじゃないとダメ」なんですよね、きっと。それこそ、手にとってすぐ「どうしましょう」と言われても「いらんわ」で終わってしまいそうな気がしますから、このおばあちゃんとお客がシンクロする瞬間、まさにその一瞬がチャンスなのでしょう。僕もこういうお客の気持ちというのは、ものすごくわかるし、同じシチュエーションで、おばあちゃんがちょっと困った顔をしながら小声で「どうしましょう」なんて言ってきたら、「(おばあちゃん困ってるみたいだし)買おうかな」と、つい財布の紐も緩んでしまいそうです。その品物が欲しいというよりは、目の前のおばあちゃんと喜ばせたい、というような(いや、そのおばあちゃんは、そもそも商売でやっているのだし、赤の他人のはずなのに!)感情に押し流されてしまうんですよね。
 そういうのって、僕の「甘さ」だと思っていたのだけれど、こうして解説されてみると、それだけじゃないんだな、ということがわかります。そうか、僕はおばあちゃんの立場になっているのか、と。
 僕は服とか買うのも苦手なんですけど、確かに、「断りにくい理由」というのは、そういうところにあるのかもしれない。それで、なんとかうまく断ろうと必要以上に構えて拒否的になったりして、あとから「感じ悪かったかな…」なんて、自己嫌悪に陥ってみたり。

 ところで、これって「告白の間合い」にも使えそうですよね。いざというときには、強引に「つきあってくれ!」とか、弱気に「やめますか?」とか言うより、小声で「どうしましょう」って言ってみたら、意外と相手はこちらに感情移入して「いいですよ」と答えてくれたりするかも…
 まあ、僕らはおばあちゃんのような百戦錬磨のツワモノではないし、通天閣のペナントほど、うまく売れるとも思えませんけどねえ。

03月09日(水)
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