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ダメダメ医学生の京風日記
by 伯耕
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■いざ見学!冠状動脈バイパス手術
変な言い方だけど、執刀チームは「スウィング」してるからなあ。
教授の鮮やかな吻合術に見入ってしまう俺。
どこを縫えばつながるかなんて判らないもんなあ。みんな赤いし。

手術室背面にある「手術時間」のデジタルタイマーが3時間半を回った。
さすがに俺も足腰が痛くなってきたので時々椅子に座る事にする。
3箇所目の吻合が終り、続いて4ヶ所目。つなぐたびにエコーで血流を確認する。
さすがにドレーンで回収した血液も溜まってきたようだ。
時々聞いたことある言葉が出てくるとちょっと嬉しい。
「電気メス取って」、「コッヘル」、こんなの聞いたことあるなあ。
ただ今回は人工心肺装置は使わないみたい。使う事もあるらしいけどね。

4箇所目の吻合が終り、教授がいったん最前線から離れる。
コートを脱いで戻ってきた教授が俺を見つけて話し掛けてきてくれた。
臨床医としてのあり方、研究との関わり合い、医療経済について…。
まさか手術室で話してくれるとは思わなかった様々なお話。
臨床医として、常に患者の側に立って物事を考える事、
そしてその上に研究者としての進歩を考え、それは常に患者に
還元されるべきだということ。当たり前の事ばかりだが、
だからこそ心に残る素晴らしいお話だった。
常に患者のことを第一に考えられる医者でありたい、それ以上に、
常に他人の事を思いやれるような一人の人間でありたいと思った。
そしてその上に先進性、これが大事なんだなあ。

5時間経過。腰が痛いし腹も減った。
まずは患部の洗浄だが…患部にビーカーで水を注いでドレーンで吸い込む。
てか、こんな原始的な方法でいいのか?内蔵を水洗い(笑)。
その後、心膜の縫合を終え、後は胸骨をつなげる作業に入る。
ここで、カツオの一本釣りでもするかのような馬鹿でかい針に
通したワイヤーを骨に突き刺していく。ブツッ、ブツッて露骨な音。
そして通し終えたらワイヤーを力の限り引っ張り、胸骨を固定。
そして、皮膚の縫合に入る。俺は他のお医者さんに症状の説明を受けていた。

6時間経過、手術は成功した。手術台から患者さんをベッドに移し、
ICUに搬送。家族の方とも対面。まだ患者さん、麻酔から覚めてないみたい。

しばらくして別の手術室で新たに冠状動脈バイパス術が始まった。
俺が部屋に入ると既に心臓が露出、クラフトの剥離も済み、
後はバイパス地点に吻合するのみとなっていた。
1時間後、吻合開始。無事終った…と思われたが、エコーで見ると、
どうもバイパス路への血流が少ない模様。急遽吻合をやり直すことに。
多少その場がヒートアップする。出血もさっきよりかなり多い。
心膜と肋骨の間におびただしい量の血液が溜まり、ドレーンで吸い出してゆく。
しばらくして新たに縫合した吻合部にも、エコー検査の結果
今度は無事、そこそこの血流があることが判明。ほっとした雰囲気だ。

このあたりで俺はかれこれ10時間以上、ほぼ立ってる状態。
しかし、きついのは3時間、6時間後くらいかな。ピークはほんとに辛い。
でも10時間もたつとさすがに慣れてきた…かな。

このあたりで時計が8時を回り、俺は帰宅させてもらう。
更衣室で手術着から白衣に着替え、研修医室に。
詰めている先生に事情を話して本日終了。

外へ出たらもう真っ暗。当たり前か。
でも病院から外に出ると不思議な感じ。
さっきまで生きてる人間の心臓を至近距離で見てたってねぇ。
医者ってのは面白いけど不思議なものです。

04月01日(月)
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