ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■5664,シネマ評『ウフィツィ美術館』 〜A
私の姿をみて、妻が救急車を呼ぶと言い出した。私は翌日からの引率が気に
なっていたのだが、とにかく医者に診てもらうべきだという妻の意見に最終的
には従うことにした。そして、壁に掛けていたズボンの後ろポケットから
パスポートやクレジットカードを取り出してもらい、ベッド脇に置いていた
カバンの中にある大学の緊急連絡先に電話するように頼んだ。そうこうして
いる間も、激しい頭痛は止まらない。その後ようやく、二人の救急救命士が
到着し(・・略) 救急車の寝台に横たわると、身体の大きい私には思いのほか
窮屈で、しかも、走行中の振動が頭にひびいた。救急救命士は、何度も私の名前
を呼ぶと同時に、血圧を測っていた。横たわっている私からも血圧計の数字が
読み取れたので、それをみていると、血圧は一五〇、一七〇、……と、
どんどん上昇していく。私はこのまま死ぬことを考え、つき添っていた妻に
かろうじて感謝のことばを言って、そのまま、意識を失ったのだった。
 これは当日のほんの一部のできごとを書いたが、おそらく多くの方は、
極めて鮮明な私の記憶に驚くのではないだろうか。実際、私は今もなお、
あの場面を、まるで自分が主役の映画を観るかのように、心の中に鮮明に
思い浮かべることができる。しかし私には、その後、つまり救急車の中で
意識を失った後の、五日間の記憶がないのである。この五日間に、月並な
表現だが、私は生死分境をさまよっていた。・・ 》
▼ 二年ほど前に、知人が突然、TVの朝ドラを見ている最中に脳梗塞で倒れ、
 救急車で病院に運ばれたが、意識が戻らないまま亡くなってしまった。
状況は似ているが、著者は生還して状況をこと細かく書きのこしている。
 知人は長年、糖尿病に悩まされていたというが、突然、脳溢血で死ぬとは
思ってもいなかっただろう。 この年齢では、「マサカの坂」はない。

09月17日(土)
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