ID:54909
堀井On-Line
by horii86
[383953hit]
■6134,閑話小題 〜千年に一度の経験
・・・・・・
5767,「やさしさ」という技術 〜2
2016年12月29日(木)
<「やさしさ」という技術>ステファン・アインホルン(著),
* たったひとり健康に育った赤ん坊
何処にいても、何となく気が合う人がいる。この文章を読んで気づいたのが、
両親のシッカリした愛情を人一倍注がれた人。女性に「やさしさ」の温みが
あればこそ、男は母親への愛情が変形し対象に向かう。逆に、好かない人は、
ベースとなる両親と自己愛の絶対量が少ない人。
人生において結婚相手の選定が大問題になる。家庭内破たんを入れると、
9割は不和というから、大部分が不幸の条件下に生まれてきたことになる。
幼児期には温もりが必要である。
以下の最悪の養護施設で「たったひとり健康に育った赤ん坊」の話がよい。
≪1930年代に、ルネ・スピッツというオーストリア人医師が児童養護施設を
訪問した。そこにはたくさんの子供がいたが、スタッフの数が足りておらず、
ほとんどの子供は誰にもかまわれていなかった。子供たちは身ぎれいで、
食べ物も与えられていたが、人との触れ合いに欠けていた。ほとんどの子供は
無感動で、発育も不十分だった。なかには、病名すらわからないまま衰弱して
死んでしまう子供もいたという。
だがおどろくべきことに、子供たちのなかにひとりだけ、はつらつと順調に
成長している子がいた。スピッツは、この子の成育過程を研究することにした。
この施設では、子供たちが寝ている間に清掃スタッフが部屋の掃除をしていた。
夜中に施設内を観察していたスピッツは、ある光景を目撃する。清掃スタッフ
のひとりの女性が、掃除が終わるとかならず入口脇のベッドに寄って、二段
ベッドの下の段に寝ているその子を抱き上げては、抱きしめたりなでたりして
いたのだ。ほんの一瞬である。ただし毎晩。このベッドに寝ていたおかげで、
その子は順調に成長することができたのだ。
スピッツは児童養護施設の子供について、興味ぶかい研究報告書をいくつも
残している。それによると、愛情に満ちた人と接する機会のない子供は、最低限
しか成長できず、人から関心を払ってもらえた子供よりも寿命が短くなるという。
この説の信憑性には疑問が残らないでもないが、ここには真実がある。ただ目を
向けるだけでも、隣人に大きな影響を及ぼすことができるのだ。子供は成長し、
成熟して責任能力のある大人となるために、見守られて愛されなければならない。
食べ物と清潔な衣服だけでは不十分なのだ。
健全に成長するには、人から目をかけてもらうことが重要なのは、子供に限った
話ではない。大人も、人から見られないと心が弱っていく。精神分析の父
ジグムント・フロイトはこう語っている。
「精神分析とは結局のところ、本質的に愛情を通じて治療することなのです」
さて、以下の状況を、あなたはいくつ経験したことがあるだろう?
・あなたは知人と食事をしている。相手の身の上話に、あなたは興味ぶかく耳を
傾けていたが、相手は食事が終わるまであなたの話を何も聞いてこなかった。
・あなたは知人に自分の身の上話をしていた。話の途中で一息つくと、相手は
「私にも同じような経験があるわ」と、自分の話を始めたが、その話はちっとも
「同じよう」ではなかった。
・知人と話をしているあいだじゅう、相手はずっと明後日のほうを見ていて、
明らかに他のことを考えているようだった。
・廊下で知人とすれちがって挨拶をしたが、相手は目を合わせてくれなかった。
どうだろう。どれひとつとして経験したことがない人はいないのでは? ≫
――
▼ 学生時代から、これまで多くのピンからキリの人と出会ってきた。
進学するにつれて、知性だけでなく、表向きだけではない愛情に満ちた人の
割合が多くなる。人間は触媒の質によって変化する。良い人には良い人が、
良くない人には、それなりの。キリの人は、兎にも角にも他人の話を聞かない。
6年前の会社清算時に、悪い意味での、それなりの人たちが、「それなり」に
[5]続きを読む
12月29日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る