ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459881hit]

■MDGP 2015(ロシアン・スナイパー/タイガー・ハウス/ザ・ファントム/暴走車/悪魔は闇に蠢く/400デイズ)
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ロシアン・スナイパー』“Незламна”
10月31日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷で開催
の「MDGP 2015」で上映されるウクライナ・ロシア合作
の作品。
プロローグは1947年。第2次大戦後のモスクワを訪問した前
アメリカ大統領の未亡人エレノワ・ルーズベルトは、ソ連邦
首脳との会談を差し置いて1人の女性との面会を熱望する。
それは戦時中に309人のナチスを射殺したという女性狙撃兵
との再会だった。
その狙撃兵の名前はリュドミラ・パブリチェンコ。1941年に
ナチスドイツによるソ連邦侵攻が始まった時、まだ大学生の
リュドミラは戯れで行った射撃で非凡な才能を認められ、戦
場に身を投じることになる。しかし派遣されたウクライナ戦
線で彼女は最大の激戦に巻き込まれる。
そして1942年、ソ連邦代表団の一員としてアメリカを訪れた
リュドミラは招かれたホワイトハウスでエレノワと出会う。
その訪米はルーズベルト大統領の再選に向けた運動の一環で
あったが、その中でリュドミラは堂々と自説を説き、その姿
にエレノワも関心を寄せて行く。
映画は、激戦が10ヶ月に及んだ1941年セヴァストポリ要塞の
攻防戦と、それに対比する平和な1942年のアメリカ国内の様
子が交互に描かれる。そして戦場のシーンでは激烈な戦闘の
様子と共に、リュドミラの恋心なども描いて行く。その2つ
のシーンの巧みな切り替えにも感銘を覚える作品だった。
出演は、リュドミラ役にユリア・ペレシドと、エレノア役は
イギリスのテレビで活動しているジョアン・ブラックハム。
他に2008年公開『ラフマニノフ ある愛の調べ』などのエブ
ゲニー・ツィガノフらが脇を固めている。実話に基づく脚本
と監督はセルゲイ・モクリツキーが担当した。
よく似た邦題では先に『アメリカン・スナイパー』が公開さ
れているものだが、イラク戦争を背景に戦争後遺症に苦しむ
狙撃兵を描いたクリント・イーストウッド監督の作品では、
結局は戦争英雄を称えることが目的であり、アメリカが行う
戦争を正義として賛美の映画でしかなかった。
それに対して本作は、確かに1943年にソ連邦英雄賞を授与さ
れた女性兵士を主人公にした作品ではあるが、映画の中で彼
女を英雄に祀り上げることもなく、むしろ彼女が1人の女性
として生きようとする姿を描くことで、反戦の思想も明確に
描かれる作品になっていた。
因に「MDGP」とは、「モースト・デンジャラス・シネマ
グランプリ」の略だそうだが、本作はアクション映画という
よりは女性の姿がしっかりと描かれた作品で、文芸作品とま
では言わないが、今回のシリーズの中では一味違った作品と
は言えそうだ。
公開は10月31日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
にて上映される。

なお「MDGP 2015」では、『ロシアン・スナイパー』を
第1弾として全6作品が上映される。以下に第2弾以降の作
品も簡単に紹介しておこう。

『タイガー・ハウス』“Tiger House”
2017年に公開予定の“Pirates of the Caribbean: Dead Men
Tell No Tales”でヒロインを演じるカイヤ・スコデラリオ
と、10月公開『トランスポーター イグニション』で2代目
運び屋を襲名のエド・スクレインが共演するガールズ・アク
ション作品。
ヒロインの居る家に犯罪グループが押し入り、家人を人質に
現金の強奪が実行される。ところがその時ヒロインは2階の
部屋に隠れて犯罪者をやり過ごし、やがて反撃へと打って出
るが…。
ヒロインが一応アスリートという設定で、アクションもそれ
なりの納得ができるという展開。さらに終盤の物語には多少

[5]続きを読む

09月27日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る