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On the Production
by 井口健二
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■それでも僕は帰る
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『それでも僕は帰る
シリア 若者たちが求め続けたふるさと』
“The Return to Homs”
2011年に始まり今も終らないシリアの民主化運動「アラブの
春」。その中心地で「革命の首都」とも呼ばれた都市ホムス
で立ち上がった若者たちの姿を追ったドキュメンタリー。
中心で描かれるのは、バセットという名前のサッカー選手。
ホムスに本拠を置く古豪サッカーチームAl Karamaでユース
に在籍する彼は、アジアbQのゴールキーパーとも言われ、
将来を嘱望される若者だった。
そんなバセットは歌も上手く、集会でメッセージ曲を歌う彼
はいつしか反体制派のリーダーへと祭り上げられて行く。そ
して政府軍による包囲戦の中、辛くも街を脱出した彼だった
が、残された人々のため再び街に向かうことを決意する。
2012年にはロンドンオリンピックがあり、U−22日本代表は
この年の2月、戦火のため隣国ヨルダンで行われた最終予選
アウェイのシリア戦で唯一の敗戦を喫し、この時点で2位に
陥落している。
この時バセットは19歳で、まだオリンピック代表には選ばれ
ていないが、もしこの後にシリアがオリンピックに出場して
いたら、アジアbQとされる彼が予備の第3キーパーとして
ロンドンに帯同した可能性はあっただろう。
少なくとも現在行われているリオオリンピック出場に向けた
アジア最終予選で、彼がシリア代表チームのゴールを守り、
日本代表チームの前に立ちはだかっていた可能性は大きなも
のだ。
しかし、ロンドンオリンピック開幕直前の6月に始まったホ
ムスの包囲戦で脚に銃弾を受けた彼はサッカー選手としての
将来を諦め、戦火に身をさらして行くことになる。これが日
本と同じアジアの国の若者に起きている現実なのだ。
映画は同じホムス出身で24歳のカメラマン=オサマが撮影し
た映像に基づいており、その中でバセットの歌声は、この種
の作品によくあるシュプレヒコールではなく、正にサッカー
の応援歌(チャント)のようにも聞こえた。
それは人々を鼓舞するためのものであり、その点では応援歌
と同旨ではある。しかしその背景に横たわる現実はあまりに
厳しく、僕には直視することもままならず哀しさが込上げて
くる歌声だった。
作品は、サンダンス映画祭2014でワールド・シネマ・ドキュ
メンタリー部門のグランプリを受賞した他、ジュネーブ国際
人権映画祭のグランプリ、バルセロナ国際ドキュメンタリー
映画祭のベスト・ドキュメンタリー賞などを受賞している。
日本での上映は、すでにイヴェント上映などは行われている
が、一般向けは8月1日より、東京は渋谷アップリンクでの
ロードショウ。以後、日本全国で順次公開の予定。また市民
上映会などの実施も呼びかけられている。
世界の現実を知るために、是非とも見て欲しい作品だ。
07月26日(日)
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