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On the Production
by 井口健二
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■唐山大地震、パリよ永遠に
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『唐山大地震』“唐山大地震”
1976年に中国河北省を襲ったマグニチュード7.8の大地震。
それにより生活の全てを変えられた一家の姿を、2008年10月
紹介『戦場のレクイエム』などのフォン・シャオガン監督が
追った2010年中国製作のドラマ作品。
元々は2011年3月に日本公開予定だったが、東日本大震災の
発生で公開は見送られた。しかしそれから4年が経ち、作品
に描かれた精神を伝えるため、改めての公開が行われること
になったものだ。
ということで本作は4年前にも一度紹介しているものだが、
今回はその時の文章も参照しながら改めて紹介をしたい。と
言うのも、4年前に観たときと今回の鑑賞とでこれほど印象
が変わった作品も珍しいと思えるからだ。
それは東日本大震災の前と後とで観る側の心情が変ったこと
もあり得るが、地震に関して僕らは本作以前にも1995年の阪
神・淡路大震災や2004年の中越地震も記憶していたもので、
自分の中で何が違うのかは釈然としない。
でも明らかに印象は変わっていた。
映画は、大地震で離散した一家のその後の32年間を追ったも
の。ほぼ巻頭に描かれる大地震で夫を失い、さらに実子で双
子の姉弟のどちらか1人しか救えないと言われその弟を選択
した主婦=母親と、その時に救って貰えなかった姉。
だがその姉は偶然に命を存え、救援隊=人民解放軍の兵士の
夫妻に養女として迎えられる。そして心に傷を負いながらも
必死に生涯を送って行く。しかしその生涯は、彼女がそのよ
うな境遇故の運命にも翻弄されて行くことになる。
一方、息子と2人暮らしとなった母親もまた、自分の身代わ
りとなった夫と、見殺しにしたと思い込む娘の供養のために
生涯を捧げてしまう。それは息子が事業に成功して裕福な暮
らしが許されるようになっても変ることはなかった。
そんな一家の32年間に渡る姿が描かれて行く。
シャオガン監督作品は、2003年3月紹介『ハッピー・フュー
ネラル』以降、日本公開された作品はほぼ全てを鑑賞してき
たが、その作品はいずれもちょっと特殊なシチュエーション
での人間の姿が巧みに描かれていると感じていた。
その監督が、2007年3月紹介『女帝』ではワイヤーアクショ
ンを採用し、さらに本作ではVFXや2000人とも言われるエ
キストラを動員するなど、映像的に大掛かりな作品を制作し
ている。
しかし本作でも描かれているのは、大地震の被災者という特
別なシチュエーションの下での家族の姿であり、そのような
シチュエーションだからこその、人間の心理や営みが巧みに
描かれているものだ。
出演は、2013年11月紹介『楊家将』などのシュイ・ファン、
2012年3月紹介『ビースト・ストーカー』などのチャン・チ
ンチュー。さらに『楊家将』などのリー・チェン、今年3月
公開『妻への家路』などのチェン・タオミン。
という作品だが、実は4年前の文章を読み返すと僕はかなり
批判的な紹介を書いていた。しかし今回観なおしていて、特
に毛主席の葬儀に関しては思っていたより短く、これなら時
代の紹介として問題ないと感じたものだ。
それに以前には一番気になった娘の死亡の確認に関しても、
混乱した中ではこんなものかな。まあこちらに関しては多少
引っ掛るところはあるけれど、それも容認できないことはな
いという気にはなった。
いずれにしても、本作の描きたいのはそういうところではな
くて、災害に遭ってから32年に及ぶ一家の営み。それは中国
の国情も背景にはあるけれど、本来の人間の生き方が見事に
描かれている作品であった。
公開は3月14日から、全国ロードショウとなる。

『パリよ、永遠に』“Diplomatie”

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01月25日(日)
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