ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■マン・オブ・S、レッド・ドーン、ワールド・ウォーZ、パシフィック・リム、陸軍登戸研究所、標的の村、リトルファイター、飛べ!ダコタ
トに現実を見定めたものになっていた。
因に2人が戦うのは20キロ級のタイ国内チャンピオンという
ことだが、その戦いは懸賞金も勝者が独り占め。敗者には何
も与えられない上に、激励のため試合中にも賞金が釣り上げ
られるという強烈なもの。
その勝者となった少女が、新築の家で自分の部屋や家具など
も与えられる一方で、負けた少女は次の戦いに向けて地方で
の試合を続けている姿には、哀れさよりも社会情勢の過酷さ
が描かれていた。
もちろんこれは、児童が賭けの対象となっているのだから、
児童保護の観点からは許されるものでもないし、国内チャン
ピオンといってもアンダーグラウンドなものだろう。しかし
プロモーターやレフリーへのインタヴューはそれなりに管理
もされている感じで、外部の人間が勝手な思い込みでとやか
く言えるようなものでもない感じがした。
しかも子供たちがそれなりの自覚を持って戦いを繰り広げて
いる。その姿にはある種の感動すら覚えた。当然これは貧困
国の搾取されている子供たちの姿を描いたものだが、それだ
けではない生きることの崇高さも見える作品になっていた。
『飛べ!ダコタ』
昭和21年1月14日。太平洋戦争の終結からわずか5ヶ月後に
新潟県佐渡島の小さな村で起きた実話の映画化。
物語の中心となるのは村長の娘。丘の上から海岸を眺めてい
た彼女は、飛行機が低空で進入してくるのを目撃する。そし
て海岸に駆けつけた彼女は飛行機から出てきた兵士と対峙す
るが、彼女が発した片言の英語がその場を和ませる。
その飛行機は上海から英国領事を乗せてきたもので、悪天候
で航路を外れ、その海岸に不時着したのだった。そして領事
らは陸路目的地に向かうが、英国空軍のパイロットらは飛行
機を残していくことはできなかった。
こうして飛行機を修理するまで村に留まることになった英国
兵と村人らの交流が始まるが…。村人の中には、当然息子を
出征させた親もおり、またエリートで予科練に行ったものの
負傷して戦地にも行かず帰ってきた者もいる。
そんな様々な思いが交錯する中で、飛行機《ダコタ》を海岸
から再び飛び立たせるための作業が始まる。
物語は、実際に佐渡の寒村で起きたもので、それから64年後
に搭乗員だった兵士の息子が島を来訪、すでに他界した父親
が世話になった思い出を話していたこと、もう1度訪れたい
と言いながら実現できなかったことを語ったのだそうだ。
それを切っ掛けにこの史実を風化させてはならないと映画化
が企画され、地元のフィルムコミッションなどの働きかけで
実現した作品とのことだ。
それにしても見事に美談と言える作品だが、映画ではさらに
予科練帰りの屈折した思いや、当時の社会情勢なども巧みに
織り込み、単なる美談だけに終わらせないなかなか深い物語
に仕立てられていた。
出演は、ヒロイン役に昨年2月紹介『僕等がいた』などの比
嘉愛未。他に、昨年7月紹介『ふがいない僕は空を見た』な
どの窪田正孝、柄本明。さらにベンガル、綾田俊樹、洞口依
子、中村久美、芳本美代子、螢雪次朗、園ゆきよ、佐渡稔。
また英国兵役には、日本在住のマーク・チネリー、ディーン
・ニューコムらが扮している。
なお映画に登場するダコタ機は、英国領事が搭乗した現物も
アメリカに保存されているそうだが、個人所有のため撮影に
は使用できず。映画ではタイで発見された同型機を購入。解
体して佐渡の海岸に運んで撮影したそうだ。
07月10日(水)
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