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On the Production
by 井口健二
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■マン・オブ・S、レッド・ドーン、ワールド・ウォーZ、パシフィック・リム、陸軍登戸研究所、標的の村、リトルファイター、飛べ!ダコタ
は1人も戦犯が出なかったとのことだ。
この最後の話も、もっと具体的な追求や調査が欲しかったと
ころだ。この他にも、映画の前半では毒ガス兵器に関連して
中国で人体実験を行っていたなどの証言もあり、これも重要
な話だと思われた。しかし制作者らはその追跡は自分らの役
目でないと割り切ったのか、本作が描くのはここまで、それ
が少し物足りなくも感じられる作品だった。

『標的の村』
2012年10月1日、沖縄に軍用ヘリコプター・オスプレイが配
備されるまでを巡る反対派住民たちの姿を追った琉球朝日放
送制作のドキュメンタリー。
主な取材地は沖縄本島北部の東村高江区。そこはヤンバルの
森の豊かな自然に囲まれた人口160人ほどの小さな山村だ。
しかしその村は、国内最大の米軍軍事施設、総面積7800haの
ジャングル戦闘訓練場に囲まれ、基地のヘリパッドに離着陸
する軍用ヘリコプターは、あたかも標的の村を視認するかの
ように超低空で周囲を飛行する。因に米軍機は平時であって
も国際的な航空法規の規定外にあるそうだ。
そしてその訓練場に新たなヘリパッドの建設が認められ、そ
こには世界中で墜落事故の頻発するオスプレイの配備が想定
された。このため住民による反対運動が始まるが…。
この種の反対運動の常として、日本国政府は反対派住民を弾
圧し、住民を裁判に掛ける。その被告の中には現場にはいな
かった反対派中心人物の当時7歳の娘も含まれていた。
こうして裁判で脅しを掛けながら、ヘリパッドの建設が進め
られて行く。そしてオスプレイの配備。その際には沖縄中で
基地封鎖などの反対運動が行われるが、ここではpressの腕
章をつけた報道陣までも弾圧の標的にされる。
と、この映像を見ていて僕は昨年の10月のこの様子をほとん
ど知らなかったことにショックを受けた。そして一緒に試写
を観ていたテレビ関係の人にも確認したが、その報道が本土
ではほとんど行われなかったという事実を知った。
実際に作品に描かれる反対闘争の様子は、自分が学生だった
頃の70年安保を髣髴とさせたが、東京ではそれが全くと言え
るほど報道されなかった。その事実にも暗澹としたものだ。
この他に作品の中では、1960年代の対ベトコン訓練に住民が
動員されてベトコンの役をやらされたという事実や、その際
に枯葉剤が使用されたという疑いも報告されるが、今となっ
ては真偽の検証をすることも不可能だろう。枯葉剤は残留も
あり得るが、基地内では調査できない。
そんな日本の主権地でありながら、アメリカ軍のやりたい放
題、そしてそれを国民に伝えることもできない現実が、この
作品には見事に描かれていた。

『リトルファイター 少女たちの光と影』“Buffalo Girls”
タイの国技である格闘技ムエタイを戦う2人の少女を追った
ドキュメンタリー。
ムエタイはタイの国技とされるにもかかわらず、その社会的
なステータスは低いそうだ。その理由はムエタイが賭博の対
象になっているためで、本作もそんな賭けの対象とされてい
る少女たちの姿が描かれる。
それは少女と呼ぶにもまだ幼い8歳の2人。しかし鍛錬を重
ねリングに上がる姿はそれなりのアスリートだ。そして2人
はチャンピオンの座を目指して戦いを繰り広げて行く。もち
ろんそこには若年者に対する搾取の影は見えるのだが、彼女
たちが誇りを持って戦っているのも事実のようだ。
その少女の1人は、父親の建てている家に資金援助するのが
目的だ。そしてもう1人は、最初の少女より多少は経済的に
恵まれている感じだが、実はもっと幼い頃には病気に苦しん
でおり、手術を受けムエタイで身体を鍛えたという。そんな
色々なものを背負って彼女たちの戦いは続いて行く。
監督はトッド・キールスティン。今までは1998年に日本でも
公開されたファンタシー作品“Jack Frost”などで、主に映
画の裏方をしていた人物が、何故タイの格闘技のドキュメン
タリーを撮ることになったのか。その経緯などは不明だが、
作品は無用に同情を買うような姑息な演出もなく、ストレー

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07月10日(水)
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