ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460302hit]

■ドラゴン・プロジェクト、ポセイドン、君に捧げる初恋、13歳の夏に僕は生まれた、ロシアン・ドールズ、ジャスミンの花開く、デストランス
ケーションされた風景も美しく。さらに、パリ、ロンドン間
をユーロスターで往復しながら仕事をこなしている主人公行
動など、現代ヨーロッパ社会をよく描いた作品にも思えた。

『ジャスミンの花開く』“茉莉花開”
本作は2004年の東京国際映画祭で上映され、同年11月にも紹
介しているが、日本公開が決まって改めて試写が行われた。
まず、当時の紹介文を再録しておくと、
チャン・ツィイーが、ジャスミンの中国名に準えて茉、莉、
花と名付けられた三代の母子を演じ分け、ジョアン・チェン
が、それぞれの母親または祖母(ツィイーの成長した姿)を
順番に演じて、第2次世界大戦前から現代にいたる中国を描
いたエピックドラマ。
戦前の映画スターを夢見る少女や、戦後を力強く生き抜く女
性などを、ツィイーが可憐にまた骨太に演じ分ける。特に、
映画の巻頭での夢見る少女の姿は、『初恋のきた道』の頃を
思い出させてファンには堪らないところだ。
その発端で、ツィイーは女手一つで切り盛りしている写真館
の一人娘。ある日映画のプロデューサーに誘われてスタジオ
を訪れ、スクリーンテストを受けて女優になるのだが…。こ
のスクリーンテストでの余りにも下手糞な演技も見ものだっ
た。
また、映画では主人公の暮らす写真館の名前が時代ごとに変
って行くのも、面白く時代の変化を表わしており、その辺の
端々にも良く気の使われた作品という感じがした。
監督は、チャン・イーモウ作品の撮影監督などを務めたホウ
・ヨンのデビュー作。カメラもしっかりしているし、それ以
上に戦前戦後の中国の風物が見事に再現されている。
物語も、ほぼ同じ話が3回繰り返されるにも関わらず、それ
ぞれの時代背景や社会情勢でまったく違う展開になる。その
辺の面白さも見事な作品だった。
以上が当時の紹介文だが、見直しても印象はあまり変わらな
かった。映画祭では1日何本も見るので、印象は散漫になり
がちだが、やはりしっかりした作品は印象もはっきりしてい
るというところだろう。
なお、主人公が暮らす写真館の名前は、途中の文化大革命の
時代は「紅旗写真館」というものでこれはなるほどと思わせ
たが、他の時代の名前の由来はよく判らなかった。
また今回見直していて、特に第二章での労働者階級と、主人
公の実家での生活振りの違いが丁寧によく描かれていること
も理解できた。この他、髪型や衣裳なども、時代背景に合わ
せてかなり丁寧に描かれているようだ。
何故か中国本土でも、製作から3年経ってこの春ようやく公
開されたようだが、その間に古びてしまうような作品ではな
いし、運命に弄ばれはするが、常に前向きに進んで行くヒロ
インの姿は今の時代にも共感を呼ぶものだ。

『デス・トランス』
2000年の『VERSUS』、昨年の『SHINOBI』など
のアクション監督・下村勇二の初監督作品。出演は、『VE
RSUS』の坂口拓、『ウォーターズ』の須賀貴匡、他に剣
太郎セガール、竹内ゆう紀、藤田陽子。
とある寺で数百年に亙って厳重に守られてきた棺が、一人の
男に強奪される。男はその棺を西の森へと引き摺って行く。
そこでその棺を開くと全ての望みが叶えられるという噂が流
れていたのだ。その道中ではいろいろな連中が男を襲うが、
男は滅法強い。
しかし寺の僧正は、その棺には世界を破滅させる災厄が封じ
込められているのだと言う。そこで寺では、棺の奪還のため
一人の修行僧を送り出す。彼には抜く者を選ぶという剣が託
され、その剣を抜く者を見付け出して、棺を取り戻させよう
というのだが…
元々アクションだけが売りの作品で、物語はどうでもいいと
いうか、まあアクションの繋ぎでしかない。多分、作者はそ
れで割り切っているのだろうが、観客の立場で見ると、何と
言うかアクションの羅列に滅り張りが利かず、見終って物足
りなさが残った。
アクションそれ自体も、一所懸命にやっていることは画面か
らも判るのだが、結局のところそれを繋ぐドラマが弱いと、

[5]続きを読む

04月30日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る