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On the Production
by 井口健二
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■ザ・ウォッチャーズ、ぼくが生きてるふたつの世界、心平、箱男
督が、1993年に他界した原作者の安部公房から唯一生前に映
画化を託されていたという作者代表作の映画化。因にこの映
画化は1997年に一度始動したがクランクイン寸前に頓挫して
おり、今回はそのリベンジとなったものだ。
主人公のカメラマンは頭から腰まで段ボール箱をすっぽりか
ぶって都市を徘徊する箱男を目撃。その存在に興味を持った
主人公は、箱男の心情を探るため自らも段ボール箱を被って
みるが…。
そこに箱男の存在を乗っ取ろうとするニセ医者や、箱男を利
用して完全犯罪を実行しようとようとする元軍医などが登場
し、さらに主人公を誘惑する謎の女も絡んでくる。
出演は1997年時点で主演に決まっていたという永瀬正敏と、
2024年1月紹介『湖の女たち』などの浅野忠信。2人は『パ
ンク侍』にも出演していた。それに数百人のオーディション
で起用が決まったという白本彩奈。
さらに2023年1月紹介『せかいのおきく』などの佐藤浩市。
他に渋川清彦、中村優子、川瀬陽太らが脇を固めている。
脚本は、2017年12月3日付題名紹介『ニワトリ★スター』や
2023年3月紹介『忌怪島/きかいじま』などのいながききよ
たか。なおいながき脚本、石井監督では WOWOW放送の『ネオ
・ウルトラQ』シリーズなどもあるようだ。
安倍公房原作の映画化では、1964年『砂の女』、1966年『他
人の顔』、1968年『燃えつきた地図』などが記憶されるが、
いずれも観念的で判り難かった記憶を持つ。それらに比べる
と本作の展開は解り易いかな。
特に原作展開だと主人公が本物なのか偽物なのかもあやふや
なのだが、本作ではそれなりに明確化されており、その辺も
解り易く感じてしまうところかもしれない。映像にはそうい
う作用もあるものだ。
しかもそれを永瀬、浅野、佐藤といった面々が演技でぶつけ
合うのだから、これは映画として面白いとも言える作品だ。
中でも段ボール箱の覗き穴からの目だけの演技は見ものと言
いたいが、それが解り易いのは少し不満かな?
いずれにしても久しぶりに芸術映画を観たという感じもする
作品だった。
公開は8月23日より、全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ
オの招待で試写を観て投稿するものです。,

06月16日(日)
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