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On the Production
by 井口健二
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■兎たちの暴走、BAD LANDS バッド・ランズ、ジャン=リュック・ゴダール反逆の映画作家、ダンサー イン Paris、こいびとのみつけかた
ンスでミスをし負傷してしまう。
そんな彼女に下された診断は、無理をしたら踊れなくなると
いう過酷なもの。そこで彼女は同様の過去を持つ昔の仲間に
相談するが、その女性はダンスは諦めて別の道を目指すと語
り、さらに料理人の恋人と行く料理の旅に彼女を誘う。
こうして訪れたブルターニュの古いシャトーには、新たな出
会いが彼女を待ち受けていた。
出演は幼少期からパリ・オペラ座のダンス教室で学び正式団
員になったマリオン・バルボー。監督は「ダンスをする俳優
ではなく、演技をするダンサーを選ぶ」という観点で、プル
ミエール・ダンスーズ所属のバルボーを抜擢、彼女は本作で
セザール賞の有望若手女優賞にもノミネートされた。
他に著名な振付師であるホッフェシュ・シェクターが本人役
で出演、彼は本作の振付けだけでなく音楽も担当している。
さらに2006年6月紹介『隠された記憶』などのドゥニ・ポダ
リエス、監督の前2作にも出演のフランソワ・シヴィルらが
脇を固めている。
クラシックバレエのダンサーが傷害を経てコンテンポラリー
ダンスに目覚めるという展開は過去作品にもあるような気が
するが、本作ではそこにブルターニュの風景や様々な料理な
ども取り入れて、シンプルかつ魅力的に若い女性の再生を描
いている。
それはその物語自体が深く感動を呼べるようなものではない
が、特に若い観客には共感を呼び起こすかな。クラピッシュ
監督の狙いもその辺にあるのだろうし、シンプルな描き方だ
からこそそれが生きているようにも感じた。まあ万人に愛さ
れるような作品ということだ。
そしてそんな物語が、パリ・オペラ座の現役のダンサーたち
や、振付師シェクターのカンパニーの団員達の見事なダンス
に彩られ、その中では振付師の振り付けの妙味なども紹介さ
れる。これはダンスファンには垂涎の作品と言えそうだ。
公開は9月15日より、東京地区はヒューマントラストシネマ
有楽町、澁谷Bunkamura ル・シネマ、シネ・リーブル池袋他
にて全国ロードショウとなる。
『こいびとのみつけかた』
2011年1月紹介『婚前特急』で共にデビューした前田弘二監
督と脚本家の高田亮が、2021年に再タッグを組んでで発表し
たちょっと不思議なラヴストーリー『まともじゃないのは君
も一緒』に続く、第2弾と称される作品。
主人公は植木職人の見習いのような仕事をしている若者。そ
んな若者がコンビニで働く女性を好きになる。しかし内気な
のか何なのか、中々彼女に話し掛けることができない。それ
でもある手段で彼女と付き合うことになるが…。
こうして付き合い始めた2人だが、若者が話す話題はポケッ
トに詰め込まれた新聞や雑誌の記事の情報ばかり、しかもそ
れに意見を加えるでもなく、記事を読み上げるだけ。従って
会話などは成立しないが、2人はそれで満足なようだ。
そんな傍からは謎に包まれたような2人の関係だったが、実
は彼女には若者には告げられない秘密があった。
出演は、2022年7月紹介『窓辺にて』などに出演の倉悠貴と
2020年3月8日付題名紹介 『HOKUSAI』などの芋生悠。他に
成田凌、宇野祥平、川瀬陽太、奥野瑛太、高田里穂、松井愛
莉らが脇を固めている。
また音楽を、CM楽曲などを数多く手掛けるモリコネンが担
当していることも話題のようだ。
主人公はある種のアスペルガー症候群なのかな。そんな障碍
を持つ人に寄り添うような作品にも見える。でもまあ、全体
的にはほんわりとした独特の雰囲気の中で綴られている作品
でもある。
脚本家の高田は、2014年2月紹介『そこのみにて光輝く』や
2017年4月2日付題名紹介『武曲MUKOKU』などでも知られる
俊英だが、それらの作品とは対極と見えるものの、その根底
は同じなのかな。優れた人間味のある作品だ。
とはいうものの観る者としては、2006年1月紹介『かもめ食
堂』に始る荻上直子監督の一連の作品や、高田がテレビ版を
手掛けたという2008年5月紹介『グーグーだって猫である』
に連なるような心が休まる作品と言えそうだ。
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07月30日(日)
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