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On the Production
by 井口健二
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■ドラゴン・プロジェクト、ポセイドン、君に捧げる初恋、13歳の夏に僕は生まれた、ロシアン・ドールズ、ジャスミンの花開く、デストランス
昨年6月に『輝ける青春』を紹介しているマルコ・トゥルオ
・ジョルダーナ監督による最新作。
監督は、前作では6時間を超える上映時間で、1960年以降の
イタリア現代史を見せてくれたが、本作では13歳の少年の目
を通して現代イタリアが抱える社会問題の一つ、不法移民の
問題が提示される。
主人公の少年は、工場を営む両親の下で何不自由なく育ち、
短期のイギリス留学も経験するなど恵まれた環境に暮らして
いた。
しかし、13歳の夏の日、父親と共に父親の友人のヨットで出
発した船旅で夜の海に転落。そして力尽きようとしたとき、
通りかかった不法移民を載せた密航船に救助される。
その密航船には、アフリカから旧東欧、中近東からインドま
でさまざまな国籍の人々が足の踏み場もないほどに載せられ
ており、彼らはやたらと止まるおんぼろエンジンを頼りにイ
タリアを目指していた。
イタリア人の子供と判ると身代金の人質になる恐れもあるそ
の環境で、少年は機転を利かしたルーマニア人の兄妹に助け
られる。こうして何とかイタリアにたどり着いた少年だった
が、その船での経験は少年に今までとは違った社会への目を
開かせる。
イタリアでは、未成年の不法入国者は保護するが、18歳以上
は強制送還という法律があるようで、その狭間を巡ってドラ
マが展開する。その一つ一つの出来事が、少年に新たな社会
の仕組みを見せつける。
不法入国者は日本でも問題になっているが、暴力団などが絡
む日本と違って、イタリアではもっと普通に行われているこ
とのようだ。その事実は大人にとっては周知のことなのだろ
うが、子供の目には隠されているものなのかも知れない。
そんな大人が見て見ぬ振りをしている事実に、13歳の少年の
目を通すというやり方で改めて問題提起をしようとしている
作品のようにも感じられた。しかも、決してきれいごとだけ
でない部分も描いているところも、監督の真摯な気持ちの現
れと言えそうだ。
根の深い問題に見て見ぬ振りをしているのはどこの国も同じ
だが、それに少しでも陽を当てようとする動きも共通と採れ
る。もちろん法律などは違うが、考えなければいけないこと
は同じのようにも思われた。

『ロシアン・ドールズ』“Les Poupées russes”
2001年に公開された『スパニッシュ・アパートメント』の主
人公のその後を追った続編。と言っても、実は僕は前作を見
逃しているので、前作との繋がりはよく判らないのだが…
主人公は作家を夢見ながらも、食べるためにテレビのメロド
ラマの脚本なども執筆しているという状況。そんな中で昔の
仲間の一人がロシア人と結婚することになり、その結婚式に
招かれた彼は、この5年間の自分を振り返る。
この5年間で彼は、脚本や自叙伝の代筆などで実績を残し、
作家への足掛かりは掴んでいる。しかし恋愛の面では、5年
前の恋人とは別れても連絡は持ち続け、一方、仕事上で付き
合った女性や、行き摩りの女性とも関係を持つ。
本人は理想の女性を探しているつもりなのだが、30歳を迎え
た今、そんな生活を何時までも続けて良いものかどうか疑問
に感じ始めている部分もある。そんな人生の岐路を迎えた主
人公を、ユーモアたっぷりに描いた作品。
セドリック・クラピッシュ監督の作品では、その前の『猫が
行方不明』という作品が自分の中で消化し切れなかったとこ
ろがあり、納得できていなかった。本作も実は同じで、正直
に言って主人公の我儘さには退いてしまう感じもする。
でもまあ、最近の若者を見ていると、こんなものかなあと言
うのも判るような気がしてきたし、特に本作では、それでは
いけないという自覚も芽生えてくる部分もあって、それなり
に納得して見ることができた感じだ。
因に本作には、主人公のロマン・ディリス(真夜中のピアニ
スト)以下、オドレイ・トトゥ、セシル・ド・フランス(8
0デイズ)、ケリー・ライリー(リバティーン)ら、前作の
後ブレイクした配役がそのまま再出演している。
また、パリ、ロンドン、サンクトペテルブルグの3都市にロ

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04月30日(日)
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