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On the Production
by 井口健二
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■それでも私は Though I'm His Daughter、アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓
されていた軍の司令官によって投獄、さらにシベリア送りの
刑が科されることになる。
ところが偶然の作用によって流刑は免れ、物置同然の独房に
収監されるが、そこでいろいろな知恵を働かせた男性は、高
窓から覗ける宿舎に暮らす夫婦に目を留める。そこから奇跡
のような物語が紡がれて行く。
脚本・監督・編集・主演はサンフランシスコ生まれでアルメ
ニア系アメリカ人のマイクル・グールジャン。祖父母が大虐
殺の生き残りという監督が、祖父に捧げるとして作り上げた
アメリカ・アルメニア合作の作品だ。
共演はアルメニアとスペインの血を引く元ヘヴィー級のプロ
ボクサーでゴヤ賞ノミネートなどの経歴を持つホヴィク・ケ
ウチケリアン。ロシアとアルメニアの血を引く舞台女優のネ
リ・ウヴァロワ。
さらにロシア人のミハイル・トルヒン。アゼルバイジャン出
身のナリーヌ・グリゴリアン。アルメニアの芸術大学出身で
2005年12月紹介『ロード・オブ・ウォー』などに出演のジャ
ン=ピエール・ンシャニアンらが脇を固めている。
お祖父さんに捧げられてはいるものの実話に基づくという作
品ではない。しかしオスマン帝国による大虐殺やスターリン
主義者による横暴な支配などは歴史に基づくものであり、そ
んなアルメニアの厳しい歴史が描かれた作品ではある。
とは言え物語の展開はある種ファンタスティックと言えるも
のでもあり、まあ何というかその辺が魅力的な作品とも言え
る。そしてどんな逆境でもめげないアルメニア人の気骨のよ
うな物も描かれている。その辺が献辞でもあるのだろう。
映画の舞台はアララト山が遠望される場所のようで、作中で
も何度もその山の姿が登場する。この山は旧約聖書のノアの
方舟にも出てくるが実はアルメニアのお酒の銘柄で、僕自身
が若い頃に飲んで最高と思った銘柄でもある。
当時の日本では「アララトの3☆」しか輸入されていなかっ
たが、1970年の万博絡みで「5☆」を飲む機会があり、若輩
ながらその美味しさに感激したものだ。作中にもコニャック
の醸造所という言葉が出て来て嬉しくなった。
公開は6月13日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷シャン
テ他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社彩プロの招待で試写を観て投稿
するものです。

05月18日(日)
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