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On the Production
by 井口健二
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■パリ・オペラ座「白鳥の湖」IMAX、いもうとの時間、イマジナリー
は第1作から一貫して仲代達矢が務めている。なお仲代はそ
の間に事件を題材にした2013年1月紹介『約束』に主演もし
ている。
確か『ふたりの死刑囚』では名古屋高裁と名古屋高検の癒着
というかなれ合いぶりが指摘され、『眠る村』では一歩踏み
込んで事件の真犯人の追及が行われていたと思うが、本作で
はそれらの再考はせず、過ぎて行く時間が描かれる。
なお作中では無罪判決が確定した袴田氏のその後の様子も描
かれ、それは2024年9月紹介作では描かれなかった部分を補
完しているものだが、本件の死刑囚はすでに死去しており、
無罪となってもその喜びは描けない。
しかも本件では2024年1月に最高裁で特別抗告が棄却され、
死去した死刑囚本人に替わって唯一再審請求が可能な肉親で
ある妹もすでに94歳。その時間の限られていることが現実と
して描かれる。それは何とも言えない感覚だった。
冤罪は誰の身にも突然降りかかる可能性のあるものだし、い
ざ罪人となったら警察・検察が証拠を捏造してまでその罪を
押し付けてくる。そんな日本の現実が明確に描かれた作品と
言えるものだ。
公開は2025年1月4日より、東京地区はヒューマントラスト
シネマ有楽町、ポレポレ東中野他にて全国順次ロードショウ
となる。
なおこの紹介文は、配給協力ポレポレ東中野の招待で試写を
観て投稿するものです。

『イマジナリー』“Imaginary”
2023年4月紹介『ミーガン/M∃GAN』や2024年2月紹介
『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』など、上質の
ホラー映画を提供し続けているブラムハウス社が新たに公開
したホラー作品。
登場するのは絵本作家の女性とその夫、それに夫の連れ子の
2人の娘がいる4人家族。そんな家族が作家が幼い頃に暮ら
していた家に引っ越してくる。しかし作家自身は幼い頃にそ
の家を離れており、しかもその頃の記憶は曖昧だった。
それでも広い家に喜ぶ娘たちだったが…。幼い末娘が地下室
で古びたクマのぬいぐるみを見付けたことから事態が動き出
す。そのぬいぐるみは彼女の想像上の遊び友達となり、無邪
気な遊びを繰り広げるが、それが邪悪な色を持ち始める。
出演は、製作総指揮も兼ねる2022年『ジュラシック・ワール
ド 新たなる支配者』などのディワンダ・ワイズと、子役の
パイパー・ブラウン。他にテーゲン・バーンズ、トム・ペイ
ンらが脇を固めている。
さらに1976年版の映画『キャリー』で主人公を理解しようと
する女性教師を演じていたベティ・バックリーが、本作でも
キーとなる役柄で登場している。
脚本は2009年にディズニーで『プリンセスと魔法のキス』の
原案などを手掛けたグレッグ・アーブとジェイソン・オレム
ランド。そのオリジナルから2014年7月紹介『フライト・ゲ
ーム』で企画・総指揮などのジェフ・ワドロウが脚本・監督
・製作した。
タイトルからはイマジナリーフレンドを予想させるし、作中
でもそこへの言及は頻繁になされるが、そこからの意外な展
開に嬉しくなった。この辺のアイデアの勝利とも言えそうな
作品だ。
ただまあその展開自体は最近の流行りのような気もするが、
そんな部分も含めてブラムハウス社作品の先見というか、マ
ニア=ファンの心を捉える戦略みたいなものも感じさせてく
れる。安心して観ていられる作品だ。
しかも本作では、ホラー映画の定番であるコケ脅かしを極力
排除して、心理的にジワジワと迫る恐怖や想像力が痛みなど
を掻き立てる描写で、従来のホラーの在り方とは違う方向性
も試みている。それがまた上手い。
いずれにしてもブラムハウス社作品からは今後も目を離せな
いということだ。
公開は11月8日より、全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社東宝東和の招待で試写を観て投
稿するものです。
        *         *
 なお次週は試写を観る予定がないので、次回の更新は再来
週となります。

10月27日(日)
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