ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459565hit]
■ぴっぱらん!!、チネチッタで会いましょう、海の沈黙
ランド、チェコスロヴァキア出身のバルボラ・ボブローバ、
さらにフランスからマチュー・アマルリックらが脇を固めて
いる。
劇中で監督が撮っている作品は、1956年のイタリア共産党の
話。その伝で共産国ハンガリーのサーカス団を招請するが、
比較的自由が認められていた国家にソ連軍が侵攻し、母国を
愛する団員たちがモスクワへの抗議を開始してしまう。
この事態に板挟みになったイタリア共産党の苦悩を描く政治
的な物語のはずだったが…。出演するゾウの手配が上手く行
かなかったり、女優は勝手に恋愛沙汰を持ち込んだり、そこ
に家庭内の問題も生じてしまうというものだ。
ここでこのハンガリーのサーカス団の話に何となく聞き覚え
があって、そこは多分実話に基づいていると思うのだが、そ
の原典が見つからなかった。でもそこを乗り越える主人公の
姿に映画を感じたものだ。
そしてその撮影がチネチッタで行われていて、そのステージ
やバックステージが丁寧に描かれているのも素敵な作品だ。
因にモレッティ監督は2001年以降は5年おきに新作を発表し
てきたが、本作は前作から3年目。これも面白い。
公開は11月22日より、東京地区はヒューマントラストシネマ
有楽町、新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺他にて全国順次
ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社チャイルド・フィルムの招待で
試写を観て投稿するものです。
『海の沈黙』
テレビで『北の国から』や『やすらぎの郷』を手掛け、映画
でも1982年『駅/STATION』で日本アカデミー賞脚本賞を受賞
している脚本家・倉本聰が、1988年『海へ See you』以来の
映画脚本を手掛けた作品。
発端は権威のありそうな美術館での展覧会。そこで文科大臣
と共に作品を観ていた老画家が、自作と記された油絵の前で
足を止める。その絵は自分の代表作とされるものだが、そこ
に飾られていたのは自分の筆のものではなかった。
そしてその場は黙ってやり過ごした老画家だったが、後日に
記者会見でその事実を暴露。そして関係者が自死する事態に
発展する。その状況に美術鑑定士などが動き出すが、老画家
の妻にはある確信があった。
出演は倉本聰作品には初挑戦という本木雅弘。他に小泉今日
子、清水美砂、仲村トオル、菅野恵、石坂浩二、萩原聖人、
村田雄浩、佐野史郎、田中健、三船美佳、津嘉山正種、中井
貴一。
監督は、2019年12月紹介『Fukushima 50』などの若松節朗が
務めている。
折しも徳島県の美術館などで西洋絵画の贋作問題が世間を騒
がしているところだが、元作者が亡くなっている場合はまだ
しも、作者が存命中というのはかなり大胆な話になる。そし
てそこにザ・人間ドラマが展開されるという作品だ。
それは骨太とかいうものではなくて、決してあるはずはない
と思いながらもそのドラマに引き摺り込まれる。正に人間ド
ラマの極致という感じの作品になっていた。いやはやこれが
匠の技なのだろう。
しかも物語のキーで大きなドラマがあったはずの過去の事件
は、台詞としては語られるが詳細は削除され、逆に現在進行
形のサブストーリーが巧みに物語を彩る。そんな展開にも酔
わされる感じがした。
そして最後の謎解きまで、見事に鼻づらを掴まれて引きずり
回されるような感覚の作品だった。
さらにそれを支える俳優陣。チャラチャラしたアイドル俳優
にはない、しっかりした演技がザ・人間ドラマをスクリーン
に焼き付けてくれる。特に中井は、一方で『嘘八百』シリー
ズを持ちながらの出演には興味を引かれた。
公開は11月22日より、全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ
オの招待で試写を観て投稿するものです。
09月08日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る