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On the Production
by 井口健二
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■わたしのお母さん、ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド、響け!情熱のムリダンガム
Beatles”の制作秘話でもある。
そんな物語が、サルツマンとビートルズ研究の第一人者とさ
れるマーク・ルイソンの2人で、今や「ビートルズ・アシュ
ラム」とも呼ばれる現地を再訪する様子と共に描かれる。そ
れは観客をも当時の記憶に誘ってくれる。
製作・脚本・監督はポール・サルツマン。製作総指揮はデイ
ヴィッド・リンチ、映画のナレーションをモーガン・フリー
マンが務めている。
監督本人が当事者というこの手の作品では、やもすると自慢
話になってしまいそうだが、その辺はしっかりと抑えられて
いるのは好感が持てる。それにビートルズの描き方も人間味
があって、気持ちの良い作品だった。
そして何より、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーの教えが前
面に押し出されているのは、監督や製作総指揮のリンチがそ
の信奉者であるお陰だろうが、特に現代にはその教えの重要
さも問い掛けられている感じのする作品だった。
公開は9月23日より、東京は池袋シネマ・ロサ、ヒューマン
トラストシネマ渋谷、UPLINK吉祥寺他にて全国順次ロードシ
ョウとなる。

『響け!情熱のムリダンガム』“சர்வம் தாளமயம”
本国では2018年に公開され、同年の東京国際映画祭でも上映
された作品だが、日本公開は見送られていたインド・タミル
語映画を、東京都葛飾区の南インド料理店が買い付け、一般
公開に漕ぎ着けた作品。
主人公はタミル語映画の大スター、ヴィジャイを推し活する
若者。しかし一人の女性と出会ったことから将来のことを考
え始める。そんな折、太鼓職人の父親に連れられて見た古典
芸能の太鼓演奏に魅せられ、その道を志すが…。
苦心の末に太鼓の名手の許に弟子入りした若者は才能を開花
させ始める。しかし意地悪な兄弟子や高貴な家柄の同期弟子
たちに翻弄され、さらにはテレビ局も絡んで名手の許での修
行を断念せざるを得なくなる。
そこにはカースト制度も関り、親からもその道を諦めるよう
説得されるが、恋人の励ましの声が若者を新たな世界へと導
いて行く。
原作と監督は、1963年生まれでCMディレクター出身のラー
ジーヴ・メーナン。音楽を、2009年1月紹介『スラムドッグ
$ミリオネア』でアメリカアカデミー賞を受賞したA.R.ラ
フマーンが担当している。
監督と音楽家はCM時代からの旧知の仲だそうで、音楽家の
推薦で1997年と2000年にも音楽を中心とした映画を監督して
ヒットさせているが、本作は前作から18年を経ての第3作だ
そうだ。
因に南インド出身の音楽家は、地元の作品を手掛けるときに
はローカルな音楽シーンを意識するそうだが、本作でもそれ
はいかんなく発揮されている。特に若者が新たな世界に導か
れるシーンは見事な展開だ。
それに比べると、特に前半の兄弟子からのいじめのシーンな
どはかなりべたな感じだが、そこに見え隠れするカーストと
の関りは、恐らく現地の人には鋭く映るものなのだろう。そ
んな社会状況も巧みに描かれた作品だ。
それといじめの展開の中では、リメイクもされた石原裕次郎
主演の日活映画も思い出したが、それを言うのは野暮という
ものだろう。いやひょっとしてオマージュか?
公開は10月1日より、東京は渋谷のシアター・イメージフォ
ーラム他にて全国順次ロードショウとなる。
実は本作の試写は上記のビートルズの映画と連日で観たのだ
が、ドキュメンタリーとドラマなのに内容的に似通うところ
があったりもして面白かった。それにしてもインドと音楽の
繋がりには奥深いものがあるようだ。

07月10日(日)
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