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On the Production
by 井口健二
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■唐山大地震、パリよ永遠に
僕らの世代だと1966年に公開されたルネ・クレマン監督によ
る上映時間2時間53分の大作『パリは燃えているか』が思い
出される第2次大戦秘話の映画化。
第2次大戦末期。戦前のパリに魅了され、ベルリンをパリの
ようにしたいと思い描いていたアドルフ・ヒトラーは、連合
軍の爆撃で廃墟と化したベルリンの惨状にパリも同じ様にし
てやると復讐心をたぎらせる。
そしてパリ駐在司令官のコルティッツ将軍にパリ壊滅作戦を
指令。この状況にコルティッツは、すでにドイツ軍の敗北を
認識していたものの総統の命令には逆らえず、パリの各所に
爆薬の敷設を命令する。
一方、中立国スウェーデンの総領事を務めるノルドリンクは
実はパリに生まれ育ち、そんなパリを愛する男がナチスの将
軍に交渉を試みる。そして物語はドイツ軍パリ総司令部の置
かれたホテルの一室で開幕する。
本作は舞台劇に基づくもので、主演のアンドレ・デュソリエ
(2011年9月紹介『風にそよぐ草』などアラン・レネ作品の
常連)と、ニエス・アレストリュブ(同月紹介『サラの鍵』
などに出演)も舞台に引き続いての共演となっている。
そのフランスで大ヒットしたというシリル・ジュリーの戯曲
から、ドイツ出身で昨年10月日本公開された『シャトーブリ
アンからの手紙』などのフォルカー・シュレンドルフ監督が
脚色・映画化したものだ。
僕は1966年の作品を公開時に観ているのだが、実はオースン
・ウェルズとゲルト・フレーベによって演じられたこの2人
のドラマをほとんど覚えていなかった。ただ、映画の最後の
シーンがこの部屋だったことは鮮明に覚えているのだが…
それは1966年作品の全体がアラン・ドロン、ジャン=ポール
・ベルモンド、シャルル・ボアイエらのオールスターで演じ
られたレジスタンスの活躍を描いていて、僕の目がそちらに
行っていたせいもあるのだろう。
他にもジョージ・チャキリスやグレン・フォード、ロバート
・スタックらが演じる連合軍など、当時の人気者がきら星の
ごとく登場し、次から次の展開も目まぐるしい兎にも角にも
オールスターの映画だったのだ。
そんな大作に対して本作は、歴史の大きな流れの中に埋もれ
てしまいそうな1ページに光を当てた作品とも言える。正直
には1966年の作品では釈然としなかった部分が本作で明瞭に
なったという感じもした。
この他、本作の中でヒムラーがルーブルの美術品をベルリン
に運ばせるという台詞には、そこでは1964年の映画『大列車
作戦』が行われているのだと思い出されたり、各映画で描か
れたエピソードが繋がって行く。
そんなことも楽しめる作品になっていた。
公開は3月7日より、東京はBunkamuraル・シネマほかで、
全国ロードショウとなる。

01月25日(日)
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