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On the Production
by 井口健二
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■ガガーリン 世界を変えた108分、インターステラー、ミタケオヤシン
だがそこには、時空を超えた驚異の冒険が待ち構えていた。
さらには時間の圧縮で瞬く間に地球での時間が経過して行く
状況の中、主人公は地球に残した幼い娘との絆を信じ人類を
救うための究極の冒険に踏み出して行く。
とまあ物語の概略を書いてみたが、本作にはこの他にも実に
様々な要素が絡まっていて、それらを簡単には紹介し切れな
いものになっている。さらにこの作品に掛けるノーラン監督
の想いも伝わってくる感じの物語が展開される。
この作品の製作の経緯に関しては、本ページの製作ニュース
では2006年7月1日付第114回、2007年4月1日付第132回で
紹介し、2013年3月16日付の第189回で製作開始を報告した
ものだ。
その中で本作には当初はスティーヴン・スピルバーグ監督が
関っていたことも紹介しているが、それを踏まえると本作の
前半には『未知との遭遇』を思わせる展開もあり、ニヤリと
させられる。
とは言え全体を見渡すと、本作における『2001年宇宙の旅』
へのオマージュはさらに容易に見出されるところだが、実は
神の存在を根底に置いた『2001年』に対して、本作では人類
自身の行為こそが未来への鍵と主張している。
これは恐らくはスタンリー・クーブリックの『2001年』では
なく、アーサー・C・クラークの『2001年』に寄せられたも
のだと思うところだ。それは映画の終盤でスクリーンの右下
に映されるディスプレイの映像にも現れている。
そしてさらにその想いは、現在はデヴィッド・フィンチャー
の監督が決まっているクラーク原作『宇宙のランデブー』の
映画化に対して、まるで「やらないなら俺に任せろ」と言っ
ているような、そんな気分にもさせられた。
出演は、マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ジェシ
カ・チャスティン、マイクル・ケイン。マコノヒーの名前は
1997年『コンタクト』で初めて認識したが、本作はその回答
編のようでもある。
他に、2013年9月紹介『死霊館』などのマッケンジー・フォ
イ。さらにマット・デイモン、ケイシー・アフレック、トッ
ファー・グレイス、エレン・バースティン、ジョン・リスゴ
ーら多彩な顔ぶれが脇を固めている。
公開は11月22日から、全国一斉のロードショウとなる。

『ミタケオヤシン』
武蔵野美術大学出身の現代アーティスト加藤翼の姿を追った
ドキュメンタリー作品。
加藤が行うアートは「引き興し」と称され、現地で自身が制
作した造形物に何本ものロープを結び付け、それを多数の参
加者の団結した力で引き興すというもの。そこには達成感も
有り、参加型のアートとして成立している。
その「引き興し」を加藤は福島の被災地でも実施し、そこで
引き興された灯台のモニュメントは、参加した被災者たちに
心地よい感情を湧き立たせたようだ。そんな加藤のパフォー
マンスアートがアメリカで実施される。
実施場所は、アメリカ合衆国のノースダコタ、サウスダコタ
両州に跨るスタンディングロック・インディアン居留地。こ
の場所にはアメリカインディアンのスー族が多く暮し、北部
で最大級の居留地が設けられている。
その場所で加藤は、最初に巨大なティピの引き興しを計画す
る。ティピは本来はテントだが今回の造形では引き興しのた
めに木材で制作され、その壁面には子供たちなどが参加して
様々な絵が描かれていた。
続いて加藤はそのティピを造形した木材を持参して、かつて
インディアン寄宿学校(ボーディングスクール)が置かれた
場所に赴き、そこで校舎を模した造形を制作。今回はそれを
引き興し、さらに引き倒すことを計画する。
そんな加藤の活動が、武蔵野美術大学の同級生だという江藤
孝治監督によって記録されている。因に江藤監督はドキュメ
ンタリー制作会社のグループ現代に所属し、本作も製作は同
社になっている。
という作品だが、実は本作ではボーディングスクールの歴史
も一歩踏み込んで紹介されている。この寄宿学校については
2011年6月紹介『ワン・ヴォイス』でも紹介されたが、正に
民族の歴史を奪う同化教育が行われていた。

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11月09日(日)
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