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On the Production
by 井口健二
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■ヲ乃ガワ、茜色クラリネット
乃(1997年生まれ、撮影時高校1年生)。すでに中学時に脚本
監督した短編作品が受賞も果たしているとのことで、今回は
ワークショップ初の長編作品に抜擢された。
脚本は一般公募された島崎友樹という男性のものだが、監督
はその改稿も行ったとのことで、今どきの女子中学生の言い
回しや、元々ファンタシーが好きという監督の感性が作品の
各所に磨きを掛けているようだ。
主演は、監督の前作にも出演したという佐藤楓子と佐藤莉奈
(共に1999年生まれ)。その周囲を劇団系や舞台演出も務める
大人の俳優たちがしっかりと支えて、見事なアンサンブルを
繰り広げている。
映画の巻頭では躍動する演出で活気に溢れた街の風景が描写
され、そこから一転して静謐な夢の世界に入って行く。その
切り替えが見事で、正しく夢に入ったという感覚が伝わって
きた。これが高校生の作品かと括目したものだ。
また物語には、夢と現実の多層化という複雑な構成があり、
さらにそこに監督自身の映画に掛ける想いや現実社会の状況
なども重なって、一歩間違えば混乱の極みになるような作品
だが、10代の監督が見事にそれを処理していた。
僕が観た初回の試写会では、上映後に監督も登壇のティーチ
インがあって、そこでの発言によると編集や画質の調整など
には大人のプロの手も入っているとのこと。しかし基本は監
督の意見な訳で、この才能は期待したい。
それにしても、登壇した現在高校2年生の監督は受け答えも
しっかりとして正に才媛という感じ。将来は三谷幸喜のよう
なコメディも書いてみたいと話していたが、ファンタシーの
路線も忘れずに夢を実現して欲しいものだ。
地元での公開はすでに行われたようだが、東京では11月1日
から14日まで、渋谷のユーロスペースにて2週間限定のモー
ニングショウが行われる。以後は全国のミニシアターで順次
公開となるようだ。
また海外の映画祭での上映も決定しているようで、それに向
けたファンドの支援が呼びかけられている。ファンディング
の期間が10月23日までで、映画を観ない内の支援は難しいか
もしれないが、観た僕は少し支援したいと考えている。

09月21日(日)
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