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On the Production
by 井口健二
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■イフ・アイ・ステイ〜愛が還る場所〜、Frankie & Alice
事が次々に起きていた。
それは、例えば楽屋に置かれた新聞のクロスワードが完璧に
解かれていたり、貯金が大幅に減って代わりに買った覚えの
ないドレスがワードローブに架かっていたり…。そして身に
覚えのない傷害罪で逮捕された彼女は、刑務所へ行くか精神
病院に入院かの選択を迫られる。
こうして精神病院に入院したフランキーは1人の男性セラピ
ストと出会う。オズという名のその男性は医者としては医療
現場を離れて研究が専門だったが、フランキーのセラピーを
行ったオズは程無くして彼女の中の別の人格に気付き、彼女
を対象とした研究に没頭して行く。
そしてついにオズの前に表れた人格はアリスと名乗り、人種
差別主義を表明するアリスはフランキーの人格を消滅させ、
その座を奪うことを目論んでいた。こうして人格の対決に巻
き込まれたオズは、フランキーの過去に多重人格の原因を求
め、彼女の過去を探り始めるが…。
物語は彼女の過去を巡って、ある種の謎解きの興味も引く作
品に仕上げられている。
共演は、2011年11月紹介『メランコリア』などラース・フォ
ン=トリアー監督作品の常連で、2011年5月及び2013年12月
紹介『マイティー・ソー』シリーズなどのステラン・スカル
スガルド。他にも配役はあるが、事実上この2人による作品
だ。
宣伝文には現代版「ジキルとハイド」という言葉が使われて
いるが、本作は「解離性同一性障害」を描いたもので、年配
の映画ファンならジョアン・ウッドワードがオスカー主演女
優賞に輝いた1957年の『イブの三つの顔』か、最近の人なら
ダニエル・キースの『ビリー・マリガン』を挙げる方が適切
のような気がする。
その解離性同一性障害の女性の実話に基づく物語を、本作で
はその実話に魅了されたベリーが自ら映画化権を取得して熱
演しているものだが、果たしてその出来栄えは正直に言うと
ベリーの演技力に頼り過ぎたのではないかと思える。
その演技は本作でゴールデングローブ賞の候補になったほど
のものではあるが、その演技で女性の状況を充分に描き切れ
たかどうか。そこにもっとドラマティックな展開もあったの
ではないか。そんなことも考えてしまった。
でもまあベリーの熱演は観られるし、ファンにはそれで充分
と言える作品ではある。
公開は9月20日より、東京はヒューマントラストシネマ有楽
町ほかで、全国順次ロードショウとなる。
08月24日(日)
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