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by UKOZ
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■少女小説
先日某I田氏と電話していて、氷室冴子の名前が話題に上って嬉しかった。『ざ・ちぇんじ』『雑居時代』『なんて素敵にジャパネスク』…等々。私が一番最初に読んだのは『シンデレラミステリー』で、数多い氷室作品の中でも、特別な一冊(二冊)。『白い少女たち』と『さようならアルルカン』には高評価をつけるけれど、私が「好き」なのはなんといってもリネのお話二作である。
当時小学生の私は図書館の新着棚で、本のタイトルの『ミステリー』に惹かれてこの本を手にした記憶がある。幼い頃からハヤカワや東京創元社の翻訳ミステリに親しみ、国産では『斜め屋敷の犯罪』で島田荘司の名前を覚えた頃だったかと思う、とにかくミステリに飢えていた。コバルトの読者層から言えば最高に間違っている。間違っているといえば、この本はタイトルこそ違えど『シンデレラ迷宮』の続編なのである。いきなり下巻から読み出してしまったようなものだ。なまいきにも「子供っぽい文章だなぁー」などと思いながら読んでおきながら、当たり前だが話は半分程度にしか分からない。自分の読解力に対して相当不安になった。無事、前作にあたる『シンデレラ迷宮』を図書館で探し出し、読了して尚、この本は私にミステリーを残した。今度は「奥方」が誰なのか分からないのである。この辺、ネタバレなので伏せるがリネが別世界で出会う住人は古今東西の小説や戯曲など物語の登場人物達なのである。「奥方」の本名はジェイン。私は『ジェイン・エア』を読んだことが無かった。そこで子供らしく母に〜ってどんなお話?と聞いたところ、「陰気でつまらない話、嫌い」と返ってきた。商売女が男に馬乗りになって腰を揺すり、翌朝には拳銃で頭を撃ち抜かれるようなハードボイルドを平気で与えておきながら、何故か件の小説を読ませるのは気が進まないらしい母は、家にある文学全集から『嵐が丘』を引っ張り出してきて代わりに薦めた。表紙を開いて3ページで飽きた。子供ながらショックを受けた。これがエンターテインメントと文藝の違いなのだと思い知らされた。リネはこうした作品を愛読していたのだ。
そういう訳で氷室冴子とリネは、私に文藝への畏敬を植え付けた。そして、もう一つ、今もって大事な趣味である「二次創作」の楽しみを教えてくれた。リネは私の「大好きな友人」なのです。
西UKO 30:40
11月29日(月)
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