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せきねしんいちの観劇&稽古日記
by せきねしんいち
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■匂いの記憶
蒸し暑いので、冷風扇を物置から出してきた。去年、水はちゃんとぬいてしまったはずなのに、出てくる風がかびくさい。もう一度水をぬいて、後についてるフィルターを掃除する。
冷たい風が出てくるのは簡単な仕組みだ。機械の中の布が水に浸されて、その布を通して風が吹く。気化熱がうばわれる分、冷たい空気になる。
その布がどうやら匂いのもとらしい。雨の中、スーパーでファブリーズを買ってきて、盛大に吹き付ける。どうせびしょびしょになる部分なので。
しばらくたってスイッチをいれたら、かび臭さは消えていた。「大したもんだなあファブリーズ」と思いながら、違った匂いがしてくるのに気がつく。においの残らないタイプの筈なのに。なんの匂いだったろうと考えるが思い出せない。
夜遅く、突然思いだした。ずっと昔に使っていたポーチュガルというコロンの匂いじゃないだろうか。今はあるのかどうかわからない、微妙にマイナーな、でも当時はとても流行っていた香り。そのまんまじゃないけど、たしかにそうだ。残り香がとても近い気がする。
もしかしたら気のせいかもしれない。僕の中の記憶の匂いが変質してしまっているのかもしれない。
今は数え切れないくらいある男性用のコロン。昔はほんとに数えるほどしかなかったんじゃないだろうか。僕が知っている(いた)のは、ポーチュガルにタクティクスに、あとはMG5だっけ? そのくらいだ。
ポーチュガルは中学の同級生で、その後、いろいろあった友人がつけていた香りだ。中島みゆきのレコードを聞くことも、コーヒーの豆をひいてドリップして飲むというのも彼から僕に伝わった趣味だ。
「ムーンリバー」で描いている僕が中学生だった頃に思い出に、匂いの記憶も加わった。
07月09日(日)
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