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せきねしんいちの観劇&稽古日記
by せきねしんいち
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■「罠の狼」稽古4日目
今日は一日、区役所へ出向。毎年この時期にやっている資料の引き写しをみっちり。合間に最上階の展望ロビーに行って、気分転換。うっすら曇った空模様。それでも、遠くまでとてもよく見える。
「罠の狼」の稽古。今日は頭から。水木さんに、「はじめのうちは相手役をものすごく見てしまうので……」と言い訳して、ぞんぶんに清木場さんを見ながらの芝居。相手からもらってつくることを心がける。
ずいぶん楽にいられるようになるが、それでも、あちこちでひっかかってしまう。ただつるつるしゃべってるだけだとどこにもいけない。何にもならない。
水木さんにいろいろ質問する。実は一番ひっかかっていたことに、「なんだ、そうなんだ……」とほっとするような答えをもらい、一気に目の前が明るくなったよう。
稽古の終わりの頃の時間は、あれこれおしゃべり。水木さんいうところの、僕の「頭と口の距離がどのくらいか」。芝居の稽古だけを効率よくするだけじゃない、こんなおしゃべりの時間がとてもおもしろい。
帰り、仕事関係で、ショックなことがあり、ダメージを受ける。どうしようかと途方にくれる。
暗い気持ちのまま、芝居のことを考えていく。恋をする気持ちのことを考える。恋が終わる苦しみと痛みのことを考える。
誰かを好きになって涙を流したのは、いつが最後だったろうとふと思う。切実な、この人を失いたくないという思いが、僕のなかにどのくらいあるんだろうと。
その遠さに気がついて、ややショックを受ける。そして、ため息をつく。
傷ついてなんかいられないから、恋はしない。もちろん、人のことは好きになるけど、かなわなかったからって、ダメージなんか受けない。そうやって、自分のことを守ってきた。
そんなことを繰り返しているうちに、傷ついて涙を流すような思いは、とてもとても遠くなってしまったようだ。
稽古をしながら、一番足りなくて一番遠いのは、僕のなかの傷つくことをためらわないほどの強烈な思い。もしくは、そんなまるで血を流しているような心かもしれないと思う。
過去の恋愛の記憶を総ざらいする。舞台で演じてきた恋する役、特に恋に破れて傷ついてる役のことを思い出す。コクトーの「声」をやったことを思いだし、プーランクのオペラを聞いてみる。
中島みゆきが、今のようなしたり顔の人生の応援歌じゃなくて、まだ、恋の恨みつらみを唄ってた頃、一緒になって涙を流していたことを思い出す。あの頃の僕はどこにいったんだろう。
そんなことを考えながら、セリフをさらっていたら眠れなくなってしまった。ぐずぐずの涙ながらのセリフを、かなりいい気持ちでぶつぶつしゃべって、中島みゆきを聞いたあとのようにすっきりする。
自分をかわいそがることとは違うはず。自分の中に傷つく心がまだあるんだということを再確認した、そんな夜。
05月10日(水)
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