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せきねしんいちの観劇&稽古日記
by せきねしんいち
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■犬とエレベーター
 赤ちゃんを抱いて登場した女の子がいた。永井さんがこっそり見ていた子たちに「赤ちゃんの泣き声やって」と耳打ちしたのだけれど、「え、できません」と何人にも「断られ」て、あきらめていたら、どこからか赤ちゃんの泣き声が! 後で聞いたのだけれど、子どもたちの間を伝言がまわって、結局、違う子が赤ちゃんになったらしい。この赤ちゃんは、エレベーター内の緊張に敏感で実にいい泣き方をしていた。拍手。
 そして、最後のチーム。このチームは四人。男子二人に女子二人。
 それぞれのキャラクターをつくって、エレベーターの前で待つところから場面は始まるのだけれど、このチームの二人目、エレベーターの前に、四つんばいになって近づく男子。何だろう?と思っていたら、片足をあげて「おしっこ」をした。犬?! 
 エレベーターのエチュードは毎年一回五年やっているのだけれど、人間以外が登場したのは初めてだ。見ていたみんなはもう騒然(笑)。
 この犬は、エレベーターに乗ると自分でボタンを押して(!)、隅に丸くなって座った。
 そして、エレベーターが止まっても、ずっと寝ている。まあ、犬だから、何もできないんだけど。
 この犬っぷりが見事だった。もう、演じきってる。
 そして、乗り合わせた男子が、もう二人いる女子にどうしましょう?と話しかけても、二人はなんだか知らん顔。備え付けの電話をかけて「人が三人と犬が一匹とじこめられてるんです。・・・ふざけてないです! ・・・切れた」ということに。
 彼は、女子に話しかけたいんだけどできず、エレベーターも動かず、つい犬をなでに行ってしまう。この気持ちのゆれが生々しくて、切なくて、とってもおかしかった。
 エレベーターが止まってるのに犬にさわってしまう気持ち(しかも相手は眠っている)、とてもよくわかる。というか、途方にくれてる彼の気持ちがものすごくリアルだった。
 みんな大笑いして、大拍手! すばらしかったなあ。ものすごいものを見せてもらった。
 終了後、先生方とフィードバック。
 5年間続けている演劇授業の積み重ね、演劇のDNAがあきらかにあるんじゃないかと永井さん。
 今年の6年生は、一年目の発表を二年生のときに見ている。
 「体育館の一番前で、退屈しないかと思っていたのに、ちゃんと覚えてるんだなあって」と長崎先生。
 ほんとにすごいことだと思う。一年目の彼らももちろんがんばったし、すばらしかった。でも、目に見えないものがこんなふうに伝わっていくのってなんていいんだろう。
 先生方と一緒に、あれはおもしろかった!と話ながら、演じていた子のことをいろいろうかがい、そして、たとえば最後の犬が登場したエレベーターで「何もできないでいた女子二人はあの場で何を思っていただろう?」と馬場先生。やっぱり、ここは学校なんだ。演技の上手い下手じゃなく、子どものことをまず第一に考える。
 今日は、職場体験で一昨年の6年生が学校に来ていた。「光速マシーンに乗って」の代だ。みんな大人に一歩近づいて、それでもやっぱり演劇授業の時の表情がありありと浮かぶ中学二年生だ。
 帰りは、永井さん、篠原さんと「非戦を選ぶ演劇人の会」の打ち合わせをさっくり。
 電車の中では、今日の授業のこと、あの「犬」の話でもりあがる。
 夕方から、新宿で、「劇読み!」の打ち合わせを、石原さん、篠原さん、相馬くん、上原くんと。
 演出打ち合わせと台本について。熱が入って、3時間、みっちり話してしまい、のどががらがらになる(怒鳴ったりしたわけじゃないのに)。
 思ったことを存分に言わせてもらった。がんばれ、石原さん!

06月18日(水)
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