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せきねしんいちの観劇&稽古日記
by せきねしんいち
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■富士見丘小学校演劇授業 「光速マシーンに乗って」本番
 最後に、講師陣から一言ずつ。僕は、これから見てくれる大人は、午前中の子どもたちよりももしかするとあまり集中して見てくれないかもしれません(去年はややその傾向があった)。だから、余計に芝居を「手渡す」ことを意識してください。みんなに書いてもらった作文をもとに僕と篠原さんはこの「光速マシーンに乗って」を書き上げました。どの台詞もとても大事です。全部の台詞がきちんと聞こえて、お客さんに届いてほしいと思います。「手渡す」ことを忘れないでくださいね。
 そう言いながら、篠原さんに見えない「モノ」を手渡した。「こんなふうに」と。篠原さんは、その何かをひな壇に並んだ子どもたちの一人に渡した。健翔さんが、みんなで回してごらんと言ってくれた。子どもたちは、その何か、たぶん「思い」を全員で順に手渡してリレーしていった。最後にまた篠原さんが受け取って、体育館の広い空間に向かって広げた。
 何の打ち合わせもしていなかったのだけれど、この「手渡し」の確認はとてもいい時間だったと思う。
 この間、全員で数を数えたのと同じくらいの集中をみんなが共有できたんじゃないかと思う。
 その後、開場。子どもたちは、舞台にいたまま、お客さんを迎えた。僕はこのゆるいかんじがとても好きだ。袖で引っ込んでドキドキするよりずっといい。今回は単純に時間がなかったせいだけど、結果として子どもたちは、心の準備がずいぶんできたんじゃないかと思う。
 劇作家協会からは永井愛さん、それに斎藤憐さんが来てくださった。
 予定した席はみるみるいっぱいになって、僕は、こっちが空いてますよと、先生方と一緒に客席の誘導をしていた。
 そして、開演。
 大人達は、びっくりするくらい集中して舞台を見てくれた。子どもたちもそれに応えて、ていねいに芝居を積み重ねていってくれた。見ながら、さっきみんなで話した「手渡す」ということが、目の当たり現実になっているのを見て、涙が出てきた。
 一番気がかりだった未来人の場面、リーダーのむつき役のナナコちゃんが、この芝居の要、ポイントになる台詞をこれまでにない力強さで語ってくれた。感動する。
 今は遺跡になってしまって動かない光速マシーンを動かすには、思いの力の中でも一番強い、思い出の力が必要だ。過去に戻るには、その中でも一番大切な思い出を使わなくてはいけない。ただし、エネルギーとして使った思い出は、全員の記憶から消去されてしまう。
 このロジックは、実は、ナナコちゃんが書いてくれた作文から取り入れたものだ(「むつき」という役名も)。その台詞を語る、この「むつき」という役を、ナナコちゃんはオーディションのとき、自分でやりたいと言ってくれた。今日のむつき役はとても素晴らしかった。
 「全部の台詞が聞こえたい」とお願いしたとおり、この回の台詞はどれもみんな聞こえてきた。何度も見ている僕だからかもしれないけれど、これまでにない手応えをもった言葉になって体育館にひびいていたことは間違いない。意識するってなんてすごいんだろうと思った。そして、そのことをやってしまえることのすごさ、今この場所、時間にいることのかけがえのなさを思った。
 最後の暗転。たいが役のコバヤシくんが掲げたランプ(思いの力でともった)をみんな見ているなか、星空が浮かび上がって、フロアの博士一行が現代に戻ってくる。
 ランプにこもった思いが、きれいに星空につながり、広がった。
 大切な思い出として、自分と歩ちゃんの思い出を使ってと申し出た犬のチョコ。現代に戻ったチョコは、一行から離れてぽつんと座っている。みんなの記憶から、仲良しだった歩ちゃんの記憶からもいなくなってしまったからだ。
 チョコの声のルイちゃんと操りのイイダさんに、僕は「博士たちが歩き出したあと、ちょっとだけ待ってから後を追いかけて」とお願いした。その方が、チョコが忘れられてしまったということがわかるからと。

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01月19日(金)
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