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あんた何様?日記
by 名塚元哉
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■世界の現実と日本の“反原発”の距離感
―しかし、その点を指摘すると反発もかなり大きいのでは?

モーリー まあ、その手の人から言わせると、僕は“御用ジャーナリスト”のようです。
一応、「疑わしい過去」がありますから。

―疑わしい、とは?

モーリー まず父親のこと。僕の父は1968年から76年まで、
広島市の原爆傷害調査委員会に研究医として勤めていました。
このことで、僕の言説の妥当性を疑う人がいる。
5歳から13歳の頃の父親の職業なんて、まったく関係ないと思うのですが。

あと、僕は原子力業界からお金を受け取って講演したこともある。
お金はもらわないと食べていけないので、そこはご理解いただきたいのですが、
それでもジャーナリストとして独立性は守りました。
原子力推進の話しかさせないという依頼は受けないようにしていたし、
実際に講演では原子力業界の“問題”も指摘しました。
一方で、僕はガチの反原発派が主催するお祭りにも参加したことがあるんですよ。

―脱原発デモや集会には多くの著名人が参加しています。

モーリー 坂本龍一さんとかね。僕は彼の大ファンで、音楽家としてすごく尊敬しています。
しかし、この問題での彼の発言には違和感がある。
例えば、彼は即廃炉を主張していますが、廃炉にした場合としなかった場合
それぞれの環境リスクとか、科学的な検証をご自分でされているのでしょうか? 
そうでないなら、それは無責任だと思います。

彼を支持する人たちも、坂本龍一が好きだからといって、
その主張を無条件で受け入れていいんですかね? 
そういう情緒でつながる横滑りって、すっごく安易だと思います。

―その人の知名度や“看板”で決めてしまってはダメだと。

モーリー それと「世界」を知ることが決定的に重要です。
例えば、アメリカにはスチュアート・ブランドという60年代から環境活動をしている人がいます。
昔は反原発活動家だったんですが、近年、考え方を180度変え、
地球温暖化を防ぐには原発しかないと言っている。
ガチガチの反原発派がなぜそうなったか。
「魂を売ったから」などと短絡的なことを言わずに、
その経緯を追っていけばもっと視野が広がると思います。

―世界中が思いを共有しているわけではない。

モーリー 結論から言うと、「一国からの脱原発」は不可能だと思います。
今、世界ではどんどん原発が拡散しようとしている。
インド、ベトナム、UAE、ブラジル……特に中国では、今後100基以上の原発が建設される予定です。
先進国にいるわれわれが、それをただ「けしからん」と言えるでしょうか。
石炭燃料で電気をつくり、街は燃費の悪いバイクや車の排ガスで息苦しい。
そんな国々に、「このまま頑張れ」と言うことが許されるでしょうか。

石油は戦争をもたらし、北米のシェールガスは掘削による地震や水の汚染リスクが指摘されていて、
石炭の健康被害も明らか。そういった問題を踏まえた上で、
福島の教訓を生かして世界と対話していかなければ。
世界のリアリティを複眼的に、国境の中だけじゃなく外から見ることが必要なんです。
途上国の気持ちを無視して、自分たちだけは放射能に汚れたくない……なんていう時代じゃない。
今、必要なのは真のエコロジーを語るリーダーだと思います。

―それでも「日本から脱原発を」という声もありますが……。

モーリー 素晴らしい理想。ただ悲しいかな、まったく現実的ではない。
本気でエコロジーや人類の幸せを達成したいなら、歴史も経済も科学も無視し、
人々を動員して叫んだところで何も解決しない。
便利なコンビニの中に立てこもって出てこないようなレトリックじゃ、何も変わらないんです。


■MORLEY ROBERTSON (モーリー・ロバートソン)

1963年生まれ、米ニューヨーク出身。父はアメリカ人、母は日本人。
東京大学、イェール大学、マサチューセッツ工科大学、スタンフォード大学などに現役合格したが、
東大を3ヵ月で中退、ハーバード大学へ。88年、同大卒。

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07月12日(木)
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