ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』
『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』@新宿ピカデリー スクリーン1
スンワン監督は爽快な活劇であり乍ら苦い話を撮るところが好き❤️思えば『生き残るための3つの取引』撮ったひとだもんね。そしてポストクレジットにどよめきが……エンドロール途中で出ない方がいいですよ! 『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』
[image or embed]— kai (@flower-lens.bsky.social) Apr 12, 2025 at 14:41
原題『베테랑2(ベテラン2)』、英題『I, The Executioner』。2024年、リュ・スンワン監督作品。『ベテラン』から実に9年、あのチームが帰ってきた! 前作はシネマートでの公開だったけど今回はシネコン、しかも初週はいちばんデカいスクリーン1! リュ・スンワン監督と主演のファン・ジョンミン、チョン・ヘインが来日してのジャパンプレミアや舞台挨拶も行われ感慨深い…というかその舞台挨拶のチケット全然とれなくて呆然……(転売いっぱい出てたな! 怒)。いやーでも今回の来日、『密輸1970』のときチョ・インソン連れて来たスンワン監督が手応えを感じてジョンミンさんを誘ってくれたんじゃないかなーと思う……有難や有難や。
あとやっぱずっと地道にアジア映画を紹介し続けて観客の裾野を拡げたシネマートの貢献は大きいよ。感謝してます愛してます! これからも宜しくお願いします!
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劇中の時系列は前作からそんなに経っていない設定なのかも知れないが、9年の間に社会は大きく変化している。その変化に対する迷いが率直に現れているなという感想を持った。なかったことにはしない。ではどうしたらいいんだろう。安易な答えを出さず、迷いをまるごと観客に差し出している。そこに感銘を受けた。
リュ・スンワンといえば、のアクションはゴリゴリに堪能。いやーハード、いやーヘヴィー。柔術、パルクールを応用した格闘技に加え、飛び降り、階段落ち、雨の中の乱闘とシーンに応じた多彩なアクションが満載。これを大画面で、いい音響で体験出来るのは劇場鑑賞の醍醐味。あとめっちゃ寒いなかで撮ってるな! というのがヒシヒシと伝わり、観てる方も身体がガチガチ。しかしヘインさん曰く「こんなに安全な現場初めて」。演者のケア含め、徹底したプロの仕事をするのがスンワン組。こういうところ信用出来る。
しかし今作の脚本も書いているスンワン監督は、その肉弾戦に自ら水を差している。ジョンミンさん演じる主人公ソ・ドチョルは、ときには拳が出ちゃう人情派。明洞のド真ん中で繰り広げられたカーアクションと殴り合いは前作の名シーンだった。マ・ドンソクみたいに屈強じゃないドチョルはずっと傷だらけ。あまりの痛々しさにこっちも涙目。そこが魅力でもあった(ヒドい)。
しかし今回ドチョルは、その「やられたらやり返す」が通用しなくなっていることに次々と直面する。ドチョルは自分の息子にも「やられたらやり返せ」といっている。凄惨ないじめに遭っていた息子は反撃する。それが学校で問題となる。折しもソウルでは、法で裁かれなかった殺人犯が殺される事件が次々と発生。彼らが自身の起こした手口と同じ方法で殺されていることから、動画配信者は犯人を“ヘチ”と名付け復讐代行のヒーローに祭り上げる。加害者を警護せねばならないドチョルたちチームは疲弊していく……。
「殴り返せばよかったのに」「死ねばよかったのに」。そんな愚痴をこぼしていたドチョルは自分の信念に疑問を持つ。迷いは観客にも向けられる。裏をとらない噂をイージーに流して煽る配信者。それを反射的に、感情の赴くまま拡散する民衆。その勢いに当のヘチすら乗せられ、フェイクに気付かずターゲットを選ぶ。善悪の基準は何か? 何が正しくて何が誤りなのか? 糾弾とリンチの境目は。登場人物と同様に、観客も無傷ではいられない。
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04月12日(土)
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