ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■八月納涼歌舞伎 第三部
八月納涼歌舞伎 第三部@歌舞伎座

配役変更もなんのその、てか猿弥さん最高よ! 楽しいなかにも現代の病みたいなものをチクリと刺すブラックさに猿之助さんを見た感じ。新悟くんにデカい見せ場があってうれしいやら緊張するやら、寿猿さんには全力の拍手を贈りました #弥次喜多流離譚 #八月納涼歌舞伎 pic.twitter.com/gYGx2Z1pcU— kai ☁️ (@flower_lens) August 27, 2022
歌舞伎の底力に感服しつつ、行政なんとかしてくれと歯ぎしりもしますよそりゃ。こんなことがいつ迄も続いていい訳がない。しかし本当に、歌舞伎役者と公演に関わるスタッフはすごい。

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ソニマニの前日、第一報。

・8月19日(金)第三部 公演中止のお知らせ┃歌舞伎美人(8月18日)
まあ予感はしていた…一、二部がバッタバッタと閉まっていくのを横目に、そろそろきそうだなとは思っていた……。そして、一、二部ともに1〜2日で代役を立て再開しているニュースを見て、流石だと思いつつも、興業側の切迫感もひしひしと感じた。

・第三部 8月20日(土)より公演再開のお知らせ┃歌舞伎美人(8月19日)
ソニマニに出かけたりスパークス祭りにどっぷりだったので、この知らせを見たのは8月21日。やっぱりなあ、すごいなあ。しかし無邪気にすごいすごいとも言い切れず。

昨年は各部の出演者とスタッフを完全に分けていたので、ひとつの部で感染者が出てもその部だけを閉めることでなんとか興業を成り立たせていた。しかし今は規制緩和を受け、複数の部に出演する役者が増えた(通常は当たり前のこと)。今回感染者/濃厚接触者が出たことで、ふたつの部が休演になってしまった。

現状、感染するのはもう仕方がない。責める道理なんてない。ショウ・マスト・ゴー・オンは、本当に困難で厳しい状況だ。観る側としては、配役変更は残念ではあるが、幕を開けてくれたことに感謝するばかり。そんなこんなでハラハラしつつも、それを逆手にとる舞台上の役者たちに大いに笑わせてもらい、泣かせてもらい、唸らせてもらいました。

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染五郎くんと團子くんがふたりでやる予定だった四役を、四人の役者に割り振っている。よって、ふたりが早替えで出てきて湧くであろう場面が妙に間延びする。ほら、早替えのときって、とってつけたような時間稼ぎのやりとりがあるじゃないですか(笑)。今回それをやる意味というのがほぼなくなるのね……事情を知っているとこれはこれで面白い。

しかし代役にしろ、それに伴う演出変更にしろ、1日の稽古で再開したってことよね? しかもこれ新作ですよ? すごすぎるがな……。本来の役に戻って出てきた笑三郎さんが「落ち着くわ〜」といって大ウケでした。

目玉は、なんといっても染五郎くんの代役を務めた猿弥さん。年明けも『岩戸の景清』で松也さんの代役を務め大評判だった。安心と信頼の市川猿弥! 芝居は安定、踊りも軽やか、ちょいちょいアドリブも挟む。重ねていうけど新作です。段取りも、踊りの振付も一から覚えなければならない。いや、本役の段取りや振付に上書きせねばならないのだから、より難しいだろう。踊り比べの場面では、「三番叟」等の古典を応用したものもあったけど、「ウエスト・サイド・ストーリー」風のモダンな踊りもあった。それを流麗に舞っている。感嘆しきり、ため息が出る。同じく團子くんの代役を務めた上で本役も演じた隼人くんもお見事。

本来の話をしますと、長崎の島に流れ着いた弥次喜多が、人助けをしたり、悪者を懲らしめたりしつつもちゃっかり泥棒とかして、ようやく江戸に戻ってきたら疫病で歌舞伎座が大ピンチ、買収話も浮上して……? という筋立て。ブラックな労働環境や、社会が荒むと文化や芸能が虐げられるさまをチクリと描き、「でも、こういうときこそ芸能が皆を元気づける」と宣言する。ノンシャランとした振る舞いの猿之助さんがいうから尚更響く。


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08月27日(土)
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