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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■SAVE THE どん平 安藤玉恵による“とんかつ”と“語り”の夕べ vol.1『切断』
SAVE THE どん平 安藤玉恵による“とんかつ”と“語り”の夕べ vol.1『切断』@どん平
SAVE THE どん平『切断』、やっと行けた〜! 安藤玉恵さんのご実家どん平のお座敷で、“とんかつ”と“語り”の夕べです(本来は定休日である日曜日の特別公演につきお昼)。安藤さんのひとり芝居にとんかつのお食事がつくのよ〜 pic.twitter.com/7YYuT6Khil― kai (@flower_lens) December 20, 2020
事件のご当地で演じられる阿部定。彼女が現代の言葉づかいで語る心境は、時代を超えて観る者に届き、匂いとして記憶に残る。本番前ごあいさつに現れた安藤さん、舞台上の定さん、アフタートークの安藤さん。別人のようでいて、繋がっている。役者の力と土地の磁場。脚本は劇団『地蔵中毒』の大谷皿屋敷、演出は大谷さんと安藤さん。
荒川都電(今はさくらトラムって愛称があるんですよね。E電と通じるものが…慣れない……)に乗り、宮ノ前停留所で降りる。車と並走したり、停留所にくっつくくらい近くの書店や飲食店に驚いたり。久しぶりに乗る路面電車、ワクワクしっぱなしです。先月行っていた姉から「路電ってバスと同じ仕組みだったのすっかり忘れてた。(宮ノ前より手前の)荒川車庫行きに乗っちゃって、そこで一旦降りるしかなくなって。ホームにいればまた乗れるとかじゃないのよ、そもそも改札がない(笑)」と聞いていたのでめっちゃ緊張して行き先確認しましたよね……。
・都電の利用方法┃東京都交通局
「誤って途中止まりの電車に乗車し、次の電車に乗継ぐ場合においても、別途大人170円(IC168円)、小児90円(IC84円)の運賃がかかりますのでご注意願います。」ははは。
早めに着いたのでしばし散歩。ひなたぼっこするねこがいたり、いい感じです。商店街なのだけど、日曜日は殆どどこも開いていない。そうだよなあ、普通日曜日はお休みですよ。都心が便利すぎるのだよな。などと考えているうちに開場です。チケットなどはなく、「ご予約は?」と訊かれ名前をいうと通される。お勘定はレジで後払いですって、飲食店マナーだー。もう楽しい。二階にあがり靴を脱ぎお座敷へ。座卓が3×3、ひとつの卓に座布団ふたつ。最前列中央と下手の卓には火にかけられた鉄鍋が。芝居で使うのかな? と思っていましたが、開演直前に片付けられていました。加湿に使っていたのかも、雰囲気もあるしナイスアイディア。開演ギリギリに着いたひとは卓と卓の間に追加された座布団に案内されていたので、席は全部で20とちょっと。最前列から畳二畳分程奥がステージです。段差はなし。上手に布団が敷かれ、下手に置かれているCDラジカセから流れる演歌が客入れBGM。
和服姿の安藤さんが出てきてご挨拶と諸注意。看板メニュー「燃える酒鍋」用に設置した業務用換気扇は消防署のお墨付きです。演じるスペースから客席の距離は2.5m以上離れているので問題はありませんが、心配な方はフェイスシールドをお配りしますので声をかけてください。COCOAをインストールしているスマホの電源は切らなくてもいいですが、機内モードにする等、音の出ない設定にしておいてください。一度引っ込む安藤さんを拍手で見送ります。さて開演、これからも上演は続く予定なので、以下具体的なネタバレは避けますね。
昭和十一年に起こった「阿部定事件」。吉さんの遺体を前にして、定さんはひとり宿で思いに耽る。どうしてこうなったのか、これからどうしようか、吉さんとの思い出、幼い頃の思い出。つい意地悪をしたくなってしまう気持ち、同じものを見ていても違うものを感じとっている寂しさ。定さんは今の言葉遣いで話します。独白は令和二年の言葉、吉さんとの会話は昭和十一年の言葉。
ついさっき朗らかに前説をしていた安藤さんが色っぽく気怠げな定さんになる。夏祭りにはしゃぐ少女になる。三味線を弾き、布団に寝転がり、昔のこと、今のこと、これからのことを話す。「消費」されていくであろう自分を引き受ける。生きる覚悟は鍋に灯った火のように静かで、でも強い。外界との仕切りは暗幕一枚。それなのに、幕切れの暗転は漆黒の闇に感じられました。それは定さんが覗いたあの「空洞」だったのかもしれません。孤独を感じられる、ここはまさに「劇場」でした。
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12月20日(日)
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