ID:43818
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by kai
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■スーパー歌舞伎II『新版 オグリ』
スーパー歌舞伎II『新版 オグリ』@新橋演舞場
『新版 オグリ』本日は隼人さんオグリの千秋楽ということもあり盛り上がりました。初演を知らないのだけど今回観てすごいモダンなホンだと思った〜照手姫の強さと明るさが素敵。そんで六郎の「誠の地獄はこの俺の胸の中にある」って名台詞よな…シビれた…… pic.twitter.com/kAwao0ZrMV— kai (@flower_lens) November 24, 2019
小栗判官と遊行上人を、市川猿之助と中村隼人が交替で演じます。10月に猿之助版を観ました。このときハロウィンの扮装だった寿猿さんのカメ婆、今日はクリスマスの衣装になってた(微笑)。
昭和の『當世流小栗判官』、平成の『オグリ 小栗判官』ときて令和に『新版 オグリ』。脚本もアップデートされているとは思うが、「道具」にされるのはいやだと家を出る照手姫や、母親からの苛烈な虐待から逃れたあとも負の連鎖にとりこまれる六郎等、その根幹は変わっていない筈。現代を映す鏡のようだが、彼等が行き着く先の光に救われる思い。新版の脚本は横内謙介。
興味深かったのは閻魔大王。ホント閻魔様いいひと〜(ひとじゃないけど)、人間ができてる〜(人間じゃないけど)。世を憂い、世のためひとのため、地獄に何が出来るかを考えている。そして旧態依然の地獄を自ら破壊する。非の打ち所がなさそうに見えるオグリのひととなりを瞬時に見抜き、現世に戻すことでその欠落に気付かせる。小栗党の所行には矛盾があります。現に照手姫の実家はとりつぶしだし、自業自得というにはちとつらい。閻魔様はオグリに、自分の道を行く者が自分ひとりで生きているわけではないということを教えてくれる。
そんな閻魔大王を演じたのは浅野和之おじいちゃん。一周まわってジャガーさんに見えるお素敵な扮装でしたが(笑)心優しくちょっと抜けてる閻魔様、なんて魅力的! この愛され上手! 世相をチクリと刺したり梅原猛先生の教えを説いたり煖エ洋を「煖エくん」と呼んだり(笑)自由だったな〜。この日は笑三郎さん演じる閻魔夫人を「さちこ!」と呼んでいたしどこからどこ迄がアドリブだったんだろうか。事前発表されていなかった役もこまごまやってるし。閻魔様の仮の姿ともとれるけどこれ、稽古場でやってみたら面白いから採用! って増えた役もあるんじゃないか……こどもの役迄やるもんだから「やべっ、大人が来た!」なんていう台詞が大ウケです。どこに出てきても場面が面白くなるし、しかし要所は逃さず場面をキリリと締める。猿之助さんの信頼が窺えます。
地獄巡りと餓鬼阿弥蘇生譚をこうも面白くエンタメとして見せられるのだと瞠目しきりです。しかし思えば地獄ってテーマパークみたいだもんね…温泉もあるし……。『神と共に』(「第一章:罪と罰」、「第二章:因と縁」)といい、今年は思いやりに溢れる志の高い閻魔様をふたりも観て地獄に対する考えを改めたりもしましたわ。そこで思い出すのは前述、六郎の名台詞。地獄は他者に決められ与えられるものではない、ひとは皆胸のうちに自分だけの地獄を抱えている。その地獄がテーマパークって最高じゃん! 胸がすく思いでした。
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11月24日(日)
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