ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『傷だらけのふたり』とか
『傷だらけのふたり』@シネマート新宿 スクリーン1
ファン・ジョンミン出演作。原題は『남자가 사랑할 때(男が愛する時)』、英題は『MAN IN LOVE』。2014年作品。日本では昨年夏のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014にて『恋に落ちた男』の邦題で上映された後、満を持して? の一般公開です。わーい、ジョンミンさんのファンになってから初めての新作劇場公開だよ。『新しき世界』や『生き残るための3つの取引』で助監督を務めていたハン・ドンウクの監督デビュー作です。
んがー、非常に複雑な感想を抱く作品でございました。
ディテールはそれはもう見事なんです。まずクンサンの街並みを印象的に切り取る撮影。坂道が多い街での登場人物たちの立ち位置は、彼らの心情を表すかのようでもあります。下から見上げる懇願、上から見下ろす軽蔑。それらの表情を捉えるカメラ。カメラに美しく映る人物の瞳。登場人物の性格や関係性を示す細やかなエピソードも丁寧です。借金返済を迫る際、自らガソリンを呑んでしまう主人公テイルの危うさには大きな不安を予感させましたし、ホジョンがテイルに心を許していく過程を食事のシーンで表現する流れもよかった。テイルの父親や兄、兄嫁、姪との交流も非常に感じ入る場面が多く、鑑賞後も時折思い出しては噛みしめています。演者も、ジョンミンさんを筆頭に迫真の演技を見せてくれています。
しかし、しかしですよ。ひっじょーにモヤモヤします。とてもじゃないがいい話だったとは言えないわー。徹底してマッチョ思考で男のロマンなんですよ…ホジョンの立場になってみれよ……。主人公が彼女に惹かれるにはこういう要素(だけ)が必要で他はどうでもいいです、ってくらい彼女の背景が乏しい。そんな彼女に言えない秘密を主人公は抱えることになるのですが、その秘密を貫き通すことも出来ない…って言うより「言えないけど気付いてよお〜」的な目配せがチラッチラどころかギラッギラですよ。秘密が明かされたあとの描写がまた美しいものだからタチが悪い。目配せに気付いたうえでこれが男の純情なのねかわいい〜と思えってか…無理! 愛とはこうも一方的で暴力的なものか。正直ドン退きです。あのーなんだ、テイルにって言うよりこう描いた、こう描けば感動作になるって思っているスタッフにドン退きじゃ。
あとですね、これは個人の都合ですが某バンドのファンからすると酷な展開過ぎた(これ、ある意味ネタバレか)。終盤の描写めっちゃつらい。二年って具体的な数字迄同じなんだもの…某さんはそれをとりあえず回避出来たけど……悲恋ものにはベタなモチーフだけど、そのベタなモチーフを現実に抱えているひともいるんだよってところでエラい落ち込みましたし、見当はずれなことだけど怒りすら感じてしまいました…まあこれはご容赦ください。
と言う訳でこの映画、木を見て森を見ないことにしようかと。いやホント木の一本一本は素晴らしいのよ! はじめてのチュウ☆シーンやいちゃいちゃシーン、そのいちゃいちゃに至る迄のぎこちないふたりとかすっごいかわいいしほんわかします! ごはんのシーンはどれもよかった! テイルの姪っ子がすごくいいキャラクターです! テイルの兄と兄嫁のひねくれ具合もかわいいです! そうそう、美術も素晴らしかったー。理髪店の様子とか。オールロケだったそうですが、ロケハンの賜物ですね。随所にブッ込まれる新世界小ネタにも笑いを禁じ得ない。初っ端から延辺の殺し屋が牧師に(キム・ビョンオク)! ってキャスティングにブハッとなったし、友情出演のパク・ソンウンさんにはウケたウケた。知ってか知らずかこの場面、客席から結構笑いが漏れていましたよ。あっあと緑バスについて覚えたばかりだったので、テイルのお父さんの仕事ぶりは楽しく観た(が、あの状態のお父さんに仕事を続けさせていいものだろうか…とも思った……)。
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04月04日(土)
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