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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『ベルリンファイル』
『ベルリンファイル』@韓国文化院 ハンマダンホール
原題は『베를린(ベルリン)』、英題は『The Berlin File』。本国でも日本でも2013年公開。監督は『生き残るための3つの取引』のリュ・スンワン。やっと観られた〜て言うか、駐日韓国文化院の定期上映会でかかると知ってから、半年以上観るのをおあずけにしていたのだった。やっぱりスクリーンで観られる機会があるなら、それを最初にしたいのね……。
その間、ネタバレ避けつつ舞台裏のエピソードを沢山読んで当日を待ちわびておりました。初のブロックバスター作品を手掛けるプレッシャー、慣れないベルリンでの撮影に悩まされ、体調を崩していた監督にリュ・スンボム(スンワンの実弟。出演もしてます)がコチュジャンチゲ作ってあげた話とかな……。で、実際観てみてあーこりゃホントお兄ちゃん具合悪くなるわと思った(笑)。規模も予算もデカいなー! てのがありありと…しかしそれをちゃんと作り上げたお兄ちゃんすごいな! あの小柄な、温和な空気をまとったお兄ちゃんの、映画への秘めた熱情を感じたわ……。
監督の人柄とか先に知ってしまうとなんかいろいろと情がわきますが(笑)、同時にこのひとの監督としての手腕に恐れ入った次第です。演出のテンポのよさが見事。弛緩がない。退き映像による追跡シーン、接近映像による肉弾戦の塩梅も絶妙。対象がしっかり捉えられてる。終盤の銃撃戦は過去の名作へのオマージュを感じさせ、緊張感溢れる見応え。スピード感溢れる幕開け、余韻と登場人物への未来を匂わせる幕切れもいい。CGの使い方もやり過ぎない、職人的な適材適所。腰の据わった骨太アクションエンタテイメントでした。待った甲斐があった、その期待を大きく上回る出来。いーやーすごいなー。
各所で指摘されていたようですが『チャイルド44』との共通項が沢山あってそういう面でも楽しめた。片や北朝鮮の“ゴースト”ジョンソン、片やソ連の国家保安員レオ。妻が反逆罪に問われるかもと言う疑惑、そして追われる立場に。で、またその追う側ってのがひとくせある人物で。電車内尾行とかこどものこととか、細かいところも被ってたなあ。ソ連が崩壊した今北朝鮮と言う国は、皮肉なことですが映画にとって絶好なモチーフになるんですね。なんだかいろいろ考えてしまったわ……。もう『チャイルド44』もお兄ちゃんが撮っちまいなよと言いたいくらいです。ハリウッドで監督もキャストも既に決まってますけども、スンワン演出で観てみたいわー。
キャストも魅力的。“ゴースト”ジョンソンを演じるハ・ジョンウと彼を策謀に陥れるミョンスを演じるリュ・スンボムのバトルは緩急自在。ハジョッシ(=ハジョンウ+アジョシ。一部で親しまれている愛称)の無表情は、その奥に饒舌な表情を湛えてる。ネコ科の猛獣を思わせる、洗練と野性が同居した身のこなしに目が釘付け。スンボムはホントワルい役をイキイキと演じるなあ。ニヤニヤした顔がチェシャねこに似ています…ねこばっか連想するな! ミョンスの言葉遣い、わからなくともなんかすっごい聴き慣れない…これってリアムとかボビーの言葉がよく聴く英語に聴こえないってのと同じ感じ……? あ! これ北朝鮮なまりか! と気付いたときのユリイカっぷりは気持ちよかったわー。ジョンソンの妻ジョンヒ役、チョン・ジヒョンも好演。地味な装い、ぶっきらぼうな言動からにじみ出る美しさ。そして彼らを追う韓国国家情報院エージェント、ジンスを演じたハン・ソッキュ。冴えないふりして(前半相当冴えない)終盤の銃撃戦で光る光る! 草むらでジョンヒを見付けたときの戸惑い、優しく声をかける様子とのギャップがまた素敵。
そういえばアベフトシ+ウエノコウジ÷2みたいなひとまた出てた…まだ調べないと名前思い出せない。ごめん。ペク・スンイクですね。ここの画像ホントアベフトシ+ウエノコウジ÷2だわ、似てるわ。『新しき世界』ゴールドムーンの会長役、イ・ギョンヨンも重要な役で出てました。いやはや輝国山人さんのサイトほんと有難い、韓国映画界のまねきねこさんだわ(演劇好きにしか通じないたとえ)。
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12月12日(金)
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