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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■Penguin Cafe 来日公演 2014
Penguin Cafe 来日公演 2014@めぐろパーシモンホール 大ホール

「タイタニックが沈む迄演奏を続けた楽団は、海でペンギンに生まれ変わりペンギンカフェを結成した。やがて彼らは陸に上がり、再び船に乗り込み、今日ここで演奏をしている。彼らと同じ船に乗り合わせた聴衆は、目の前の危機的現実からしばし離れ、演奏に聴き入る。」

と言うのは、二年前の来日公演を観て浮かんだ妄想だ。二度目の来日公演は千人以上のキャパのコンサートホールで開催された。バルコニー席から観るステージは遠い。「二代目です、よろしくね」と言ったお互いドキドキおずおずな感じも、インディー招聘(つっても前回もプランクトンでしたが)なアットホームな空気も薄れた。それでもアーサーはステージに走って出てくるし、カフェに集まったひとたちは同じ船に乗っているようだった。

「誰もが暴力的になり、戦争が起こる。人々は狂い出し、苦しんでいる。私はペンギン・カフェのオーナー。みんないらっしゃい。」

サイモンの夢はますます現実的になる。と言うより、ずっとそうだったのだろう。楽団が不在の間、そういった場は十数年失われていた。アーサーが新しい仲間と屋号を引き継いだ楽団は、やってきたひとたちを再び分け隔てなく迎え、演奏を聴かせてくれる。最新作『THE RED BOOK』(ユングのサウンドトラック!)からのナンバーを中心に、サイモン時代の楽曲も、コーネリアスのカヴァーも織り込んだ(アーサーが「小山田くんいる?」とか言っていた)セットリスト。ステージ奥のスクリーンには、演奏するメンバーだけでなく、エミリー・ヤングが描いた数々のペンギンアートが映し出される。ペンギンダンサーズも登場し、演奏とともに聴衆を楽しませてくれる。

アーサーはピアノをメインに、クアトロ、ウクレレ、ハルモニウムと、楽曲ごとにパートを替え、ステージをニコニコと駆けまわる。それは他のメンバーも同様で、ダレンやデスも上手に行ったり下手に行ったり。パーカッションブースではピーターとキャスがうろうろ。ニールは今回も欠席でした。余談ですが来日前のアーティスト画像ではロン毛だったオリが坊主になってて、「あれ、メンバーに入れ替わりあった?」と動揺してしまった(笑)。

ペンギンダンサーズは男女ペア、木野彩子さんと小田直哉さん。山田せつ子さんによる振付を、最初はペンギンマスクを抱えて、そして被って踊る。ステージ中央に出てきたり、ステージ後方の左右にあるカフェスペース(椅子、テーブル、パラソルが置いてある)に座ったりとユーモラスな演出。岩切明香さんによる、ペンギンイメージの黒の衣装(下はサルエルパンツ)も素敵だった。振付があるとはいえダンサーのホームはにじみ出るもので、大駱駝艦のメンバーである小田さんの踊りはむっちゃ大駱駝艦。特に下半身の安定感。あの高速千鳥足とか、ああ、大駱駝艦! とニヤニヤした。それもあってか? 会場には麿さんの姿も。テンガロンハットに革ジャケット、ちょー迫力あって格好よかった。

ちなみにこの日はキャスの誕生日。メンバー紹介のとき、アーサーがキャスをとばしたので客席も本人も「えっなんで?」となっていたら、ケーキを持ったスタッフが登場。笑いとともに皆でハッピーバーステー♪、そして拍手。ひといきでロウソクの火を吹き消したキャス、照れたようにニッコリ。ホールは広くなり、バンドに貫禄も出てきたけれど、こういったひとなつっこさは変わらないものだった。終始にこやかに本編は終了。

アンコールの一曲目は、アーサーのピアノソロ「Harry Piers」。山田さんがすらりと登場、客席から静かなどよめきが起こる。サイモンに捧げられたこの楽曲をひとりで演奏するアーサー、そして山田さんのダンス。まさにトリビュートなひととき。会場がしんとした空気に包まれる。そして「Music For A Found Harmonium」。イントロと同時に歓声があがった。


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09月27日(土)
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