ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
[648420hit]
■『ロードムービー』
『ロードムービー』(DVD)
引き続きファン・ジョンミン特集。原題は『로드 무비(ロードムービー)』、英題は『Road Movie』。2002年の作品で、日本では2004年の東京国際レズビアン&ゲイ映画祭(The 13th TIL & GFF)で二回だけ上映されたようです。日本版のソフト化はされておらず、本国版もなかなか入手困難なようですが、運良くeBayに出品されていた新品を購入することが出来ました。別にプレミアもついてなかった、$19.99。てか届いた現品に価格シールが貼ってあったんだけど、それは$23だったので、むしろ安くなってた(笑)。
リージョン3なのでiBookで観るつもりだったところ、このタイミングでDVDドライヴが壊れ(何故増税前に壊れない…せめて……)リージョンフリーのプレイヤーを再購入。おかげでTVのおっきな画面で観ることが出来ました。怪我の功名なの…か……?
-----
ソウルの地下街でホームレス生活を送るデシクは、ある日酔いつぶれて路上に寝ている男のジャケットを盗む。地下街に居着いたその男ソクォンは自殺未遂を繰り返し、デシクはソクォンの面倒を見るようになる。デシクはかつて名を馳せた登山家、ソクォンは大きな取引に失敗し全てを失ったファンドマネジャー。過去を語ろうとしないデシク、過去に執着するソクォン。実業家ミンソクに拾われ仕事を請け負うことになったふたりは、ソウルを出ることにする。途中“喫茶店”の出前で出会った娼婦イルチュがその旅に加わる。デシクはソクォンに好意を抱くようになるがそれを言い出せない。デシクに好意を寄せていたイルチュは困惑する。
“ロードムービー”を物語る拘りのロケハン、駅や地下街等規制も多かったであろう場所での撮影。新人であり乍らこれらをやりきったキム・インシク監督の熱意にまず圧倒される。前半は撮影方法やエフェクトに凝った映像に加え唐突なエピソードが続き、意欲は伝わるもののふと我に返る場面が決して少なくない。しかし物語が進むにつれ、登場人物たちの心情を映す鏡のように映像がシンプルになってくる。澄んでくる、と言ってもいい。過酷な現実に足をとられ、ひとりではいられない寂しさを抱える登場人物たちの一瞬の快楽、ひとときの安息が、移動の昂揚感と風景の美しさにより寓話性を孕む。旅の終わりが予感される頃になると、デシクとソクォンの魂は、世界の暗闇にたったふたり取り残された蛍のように仄かな光を放つ。
デシクは「愛に興味がない」と言い、行きずりの男を抱いては突き放す。反面彼は弱者を放っておけない。しかしホームレス仲間だった初老の男も、様子を案じていた妊婦の女も結局は助けられない。そこにソクォンが現れた。彼によってデシクは、愛しさが執着に繋がり、愛情が恐れを生むことに気付いていく。ソクォンを失うのが怖くて彼の携帯を隠し、同性愛者だと言うことを知られたソクォンに「これだけ世話になったんだから十回はケツを貸してやらないとダメか?」と言われても、決して自分からは手を出さない。行き詰まった果てに訪ねたコテージの主人はデシクの過去を知る女性で、「出来ることならついていってあげて、彼はひとりぼっち」とソクォンに告げる。隠されていた携帯から活路を見出したソクォンは選択を迫られる。孤高に凡庸が応えるとき、塩の貯蔵庫はデシクがかつて目差した雪山へと姿を変える。
[5]続きを読む
04月26日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る