ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『アルトナの幽閉者』『ASYMMETRIA』
『アルトナの幽閉者』@新国立劇場 小劇場
うわー面白かった!!『国民の映画』の翌週観たことで考えることも増えた感じ。あとカミュとサルトルの同時代性とか、『カリギュラ』観たあとだったので入りやすかった。翻訳も同じ岩切正一郎さんでした。
1959年のドイツ。造船業で財を成した一家の主が余命を知り、後継者に次男を指名する。家から出て行くことを許さない父に次男の妻が反発し、その執着の謎を辿ると、死んだことになっていた長男の存在が浮かび上がる。心の傷を負い、戦後十三年屋敷の部屋に狂気とともにひきこもっていた長男を訪問した次男の妻は、対話を通して秘められた一家と戦争の記憶を知る……。
サルトルなもので難解ではありますが、演者の翻訳(解釈)を経て発せられる台詞には説得力があり、ああこれこそ演劇の力!と思いました。戯曲で読んでたらこれ程腑に落ちてこなかったと思う、個人的には。詩的な言葉は数多くあれど、それらが登場人物の血肉となって伝わるのです。岡本健一さんすごかったなー、喉にキツそうな発声で叫ぶシーンも多いんだけどしっかりコントロールされてる。その岡本さんをはじめ全員声の力が強いのですが、皆ちゃんとキャラクターとしての声になっていると感じられたことが大きかった。吉本菜穂子さんはもともとの声も特徴あるけど、普段こんなに癇に障らないもん(笑)レニの声になっていたなーと思った。どの人物の声も刺さる。長男が蟹へと繰り返す「えっ? 何?」の声がずっと脳内に残っている。
戦争責任と血脈は決して断ち切ることが出来ない。民族と国は分ち難い。「ドイツが戦争に負けたのは恵みだ」と言う父、戦地での悪夢に囚われる長男。謎を暴く次男の妻、それを傍観しつつ長男と妻の関係に嫉妬する次男が得たものは決して自由ではなかった。家に、国に縛り付けられる者たちへのレクイエムを聴く思いがしました。三時間半がテンポよくあっと言う間。こういう作品に出会うと、長いのは悪みたいに言われる風潮に疑問が湧きます。
額縁のなかで起こる出来事のように一家の没落と敗戦国の行く末を見せるセットが効果的。転換が多くその時間も長いのですが、幕を引き暗転した後に少しだけ暗めの照明を灯し、音楽とともにその静寂を見せる演出もよかったです。登場人物たちの視線を観客の反対側から捉えて見せる大きな鏡も存在感がありました。
ああそれから、蟹と天上(天井)からの女の声って清水邦夫作品にも出てくるんだけど今思うとこれがモチーフだったのかな?今NINとAICと新しき世界で頭がパンパンなので調べる気力が…だれかおしえて……(他力本願)。
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六本木へ移動、新世界って自由劇場跡なんだっけ…?と探しつつ歩いていたらなんかギラギラした建物に差し掛かる。EX THEATERであった。ここに今すずかつさんの舞台がかかってるのね…となんだか感慨深い気分に(笑)。
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横町慶子×山川冬樹 Live Performance『ASYMMETRIA』@音楽実験室 新世界
新世界には初めて行きました。急な階段を降りると、本来はステージであろうエリアに、雛壇状の客席が設置されているのが見えてきた。PAブースにいる山川さんとバチッと目が合う。機材や楽器も置いてあったので、山川さんはここで演奏するのかな?と思う。満員立ち見も出る盛況、オーケストラピットのようになっているPAブースの縁にも座布団が敷かれ、そこに座るひとは深〜い掘りごたつに入っているような感じで足がブラブラ。早く入場したひとはもう終演迄出られないくらいぎゅうぎゅう。なんだか天井桟敷にいるような気分になってちょっとワクワクする。舞台上には大きな鏡。下手側にちいさなテーブル、その上に電話と紙が何枚か。
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03月01日(土)
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