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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『石のような水』『ケラリーノ・サンドロヴィッチ・ミューヂック・アワー』
『石のような水』@にしすがも創造舎
今年のFESTIVAL/TOKYOはこの作品で〆となりました。演出は維新派の松本雄吉さん、脚本はマレビトの会の松田正隆さん。
タルコフスキーの『ストーカー』『惑星ソラリス』が下敷きだそうで、かなり好きな世界観。松田さんのテキストは、松本さんの演出でかなり解りやすく視覚化されていたように思います。(タルコフスキーの)『惑星ソラリス』が(ソダーバーグの)『ソラリス』になったくらいの印象でした。個人的には後者が好きで好きでも〜好きでたまらないもので、このパートにはどっぷりハマったわ……。今回の解説『「その後」の世界を描くSFメロドラマ』のメロドラマ部分はまさにここ、と言う感じ。死者とまた会いたい、また話したい。それが出来ればどんなにいいだろう。そして、それが実現したらどれだけ嬉しく、恐ろしいだろう。
対して『ストーカー』パートは自分が苦手とする部分。タルコフスキーがどうこう、ではなく、ああいうストーカーと言われるひとたちがホントに苦手なのですよ…もう思考回路から言動から怖い!怖い!あんな素敵な旦那(ここらへん個人的な好みも入ってます・笑)がいるのに何故!あんな素敵な姉に対して何故!観ているうちにこれは芝居だと言う感覚が稀薄になっていき、占部房子さんのこと嫌いになりそうな程(笑)ニャーッてなってました。またそう思わせられるくらい占部さんが見事な不気味さでですね…いやーすごかったなー。こちらはメロドラマと言うより昼ドラのようなドロドロっぷりです。苦手と言う割にはすんごい入り込んで観ているじゃないか(笑)濡れ場もエロくてよい。依頼人をある意味死の世界へと誘う旦那、いない子供を育てている妄想にとりつかれている姉。彼らをずっと傍で見ていた彼女の辿る暗夜行路。き、気が滅入る……。個人的に心が寄ってしまうのは断然旦那や姉の方なのだけど、妹のことを考える時間がいちばん長かったなあ。
と言う訳で?心情的にはソラリスパートだけを一作品にしたものを観たいわ!と思いつつ、あとをひく程考えているのはストーカーパートなのでした。
山中崇さんの色っぽさが堪能出来てよかった。代々“案内人”を務める家に生まれた諦観、苦悩を美しい涙で表現した。すうっと音が聴こえそうなくらい、綺麗に涙を流す。そうそう、立ち姿もすうっと音がしそうなくらい静かで綺麗なんですよね。ただ立っている、その姿に惹き付けられる。声もいい。姉を演じた武田暁さんも、ラジオDJと言う役柄にぴったりの魅力的な声。彼女の声がラジオから流れる、それは終末の予告のようでもある…聴いているうちについつい引き込まれてしまう。プロフィールを見てみたら、KUNIO10『更地』でイキウメ大窪くんと共演した方だった。うわあやっぱりこれ逃したの悔しいわ!死者と会うことが出来た女子高生を演じた和田華子さんもよかったです。
音響がかなり凝っていたように感じました。生の声と、それを反響させて聴かせるものと、マイク(多分)を通した声。台詞も、抑揚のないものと会話劇らしい感情をのせたものと数種類あり、その発語が登場人物の“状態”を現しているように感じて興味深かったです。以前同じにしすがも創造舎で観た『血の婚礼』の“蟹の女”を思い出したりもしました。と言えば、石切り場のような美術は九月に行った大谷資料館(大谷石採掘場跡)を、「水によって人物にある変化が起こる」はイキウメの『片鱗』を連想したな。こういうの、作品そのものの感想ではないけれど、個人的にはだいじなことだったりする。
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ところで今回の宣美がとても魅力的で、チラシを飾りたいくらい好きなものだったのですよ。ポスターもほしかったなー、販売してたら絶対買ってた!そしてパネルに入れて飾ってた!クレジットを見て驚いた。contact Gonzoの塚原悠也さんが手掛けたものでした。プロダクションノートによると、松本さんの提案で実現したとのこと。ヘリで空撮、と言うのは塚原さんのアイディアだそうです。
・京都芸術劇場ブログ:「石のような水」チラシ四方山ストーリー!!
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12月07日(土)
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