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by kai
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■『2013年・蒼白の少年少女たちによる「オイディプス王」』
さいたまネクスト・シアター『2013年・蒼白の少年少女たちによる「オイディプス王」』@彩の国さいたま芸術劇場 インサイド・シアター

いやー、凄くよかった……。『ハムレット』(一回目、二回目)は昨年観た舞台のベストワンでしたがこれも相当です。もうネクストシアターはリピートを念頭においてチケットとった方がいいかな。今回はスケジュールが混み合ってて初見が千秋楽だったんだよー!しかも「オイディプス役とクレオン役を川口覚と小久保寿人のシャッフルで稽古してます。さあどうなるでしょー」みたくレポートされてたところ、開幕直前になって「ダブルキャストでいきます」とアナウンスされてのたうちまわったね。両ヴァージョン観たかったよよよよよ。

第四回公演にして初の客演なし。過去の本公演『真田風雲録』『美しきものの伝説』『ハムレット』は過剰な装置や仕掛けで役者たちにハッパをかけていたが、今回のセットはテーバイの風景を描いたバックドロップのみの裸舞台。衣裳もシンプル。思えばネクストシアターには、蜷川スタジオ、ヤングニナガワカンパニーと言ったこれ迄の若手集団とは違うハードルが課されていた。古典作品を真っ向からぶつける。口語表現ではない台詞を乗りこなし観客の耳に届ける、無意識の域に迄持っていった所作を観客の目に届ける。これが効果をあげている。そして人間が抗えない存在=神が存在するギリシャ悲劇を成立させるには、役者の熱量が必要だ。どうしても変えられない運命に立ち向かう。斜に構えている余裕はなく、あらゆる感情をさらけ出す。

コロスは身体ひとつに背負った三味線を慟哭とともにかき鳴らす。「私たちは若いのです」と言う台詞が痛切に響く。舞台を持て余さない程の力を役者たちは身に着けている。カオスに満ちた光景、これはアガる!

観た回はオイディプス=小久保くん、クレオン=川口くん。小久保くんは『ハムレット』のホレイシオ役でのクレヴァーな台詞まわし、それと相反するキレのよい身のこなしが印象的で、一気に認識した役者さん。次のザ・ファクトリー2『火刑』では繊細な感情が一挙に崩壊する激しさに驚かされたものでした。民衆にウガーと火を噴くようなエモいオイディプスをどうやるのかな…と楽しみにしていたのですがこれがよかった!全身の力を声に載せているような迫力で、決して通りがよくはなく若干ハスキーな声(でもこのひとの声好きだなあ)が、台詞の意味を伴いスパンと頭に届きます。と言うか、頭にねじ込まれる感じすらした。上半身裸の装束だったので、台詞を発する度に肩甲骨が大きく動くさまがよく見え、声が視覚を伴っているかのようでした。また綺麗な身体つきなんですよね。マッチョではない、無駄なくついた筋肉が、薄い皮膚の下にあると感じさせる。バレエダンサーのよう。しかもちょー運動量多い(笑)舞台をコの字型に囲む客席の階段を駆け上る、駆け下りる、クレオンをはったおす、ティレシアスをふんづかまえる、イオカステをしがみつくように抱きしめる。栗原直樹さんの名前がスタッフクレジットにあったので、アクション指導は栗原さんだったのかな。身体のキレも存分に発揮、ホントこのひと動きが美しい。あとキスシーンも綺麗。いやーいいわーこのひと。『盲導犬』への出演も決まっているので楽しみだ!

クレオン川口くんは基本抑えの演技、しかしオイディプスと対立するときの姿勢に鋭さを感じさせます。小久保くんとのやりとりが多いので、ハムレットとホレイシオの関係性を、逆の立場になって見ているよう。家族でもあり、友人でもあり、理解者でもある。盲となったオイディプスへの毅然とした振る舞いがまたよくて、彼からこどもたちを引き離すときの残酷なシーンにも、やむを得ないが上の優しさを感じることが出来ました。いやーしかしこうなるとやっぱオイディプス=川口くん、クレオン=小久保くんのヴァージョンも観たかったわ…どんなだったんだろううわーん。


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02月24日(日)
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