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by kai
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■『ポリグラフ 嘘発見器』
東京芸術劇場リニューアル記念 iii×三−1『ポリグラフ 嘘発見器』@東京芸術劇場 シアターイースト

芸劇リニューアル企画、3人芝居3本シリーズの第一弾。いっや面白かった…緊張感溢れるスリリングな105分。心理サスペンスとしての緊張感、演者が何をするか読めない緊張感、舞台がどう変容するのか?と言う緊張感。チームフキコシ(今回吹越さんが『ポリグラフズ』と命名しておりました)キレッキレです。フキコシソロアクトのセンス、スキルがこういった形で結実するか…いや、なんて言うんでしょう、チームフキコシなら期待通り…いやなんだろうこれも違うな……なんて言えばいいかなー。

普段このチームはこれらのセンス、スキル、探求魂を笑いと下ネタに全部ぶっこんでる訳ですよ。それらがシリアスな舞台に活用されるとこうなるんだ!と言う驚きと喜び?「すごいっしょ!?すごいっしょ!?」と言いふらしたくもなりますね(おまえの手柄じゃねーんだよ@愛がなくても喰ってゆけます。)。と言う訳で今回これを観て「高尚なアートだわー」と思ったひとはソロアクトを観に来て「下品なアートだわー」と思えばいいじゃない。高尚も下品もアートです。格好いいぜ。

カナダ・ケベック州出身であるロベール・ルパージュの作品『Le Polygraphe』。カナダの公用語は英語と仏語。冒頭、日本とフランスの血が流れる太田緑ロランスさんが仏語と日本語をまじえ上演中の諸注意をアナウンス。しかしところどころ、おかしなことを言っている(笑)。この形式で上演するのか…?と思っていると吹越さんと森山開次さんが登場、吹越さん曰く「こうやって聴いてると、なんだかフランス語がわかるような気がしてきますよね」などと面白いことをボソボソ話す。「勿論フランス語で上演するつもりでしたが、やめてくれと言われたので僕と森山さんはホッとしました。ね、森山さん」。緊張した面持ちだった森山さんの表情がちょっと和み、こちらもリラックス。「では、はじめます」、地続きで作品世界へ連れ込まれます。

話逸れるがこの辺り、『ヒッキー・ソトニデテミターノ』に吹越さんが出演したときあー吹越さんてハイバイのこういうとこにも通じるもんがあったわーと思いました。今回映像もムーチョ村松さんだったしな。以下ネタバレあります。

殺人事件が起こり、第一発見者の青年が嘘発見器にかけられます。クロかシロかの結果は青年には知らされません。事件は迷宮入り、しかし青年は自分がずっと疑われているのではないかと言う不安を拭いきれず、次第に変調を来していきます。彼の隣人であり友人でもある女優は、その事件をもとにした映画の主役に抜擢されます。撮影の帰り、駅で飛び込みに遭遇してしまった彼女はパニックになり、男性に助けられます。彼は青年を嘘発見器にかけた人物。男女三人の、愛、セックス、疑念が交錯します。

ストーリーのおおまかな流れはこんな感じ。しかし元のホンからかなり構成を変えたようです。時系列と地域を交錯させ、映像と演者の肉体でそれらを把握させる。東ドイツの壁を越え、ケベックの城壁周辺でデート。レストランで食事のテーブルにつき、自宅のテーブルでコカインを鼻から吸う。絡まった謎が少しずつほどかれていく。映像が映し出されるのは、白い壁面、演者の白い肌。舞台においての映像の使い方って、日本ではケラさんと吹越さんが群を抜いているように思う。

そしてその映像や小道具の見立てには、まず演者の身体ありき。太田さんがバスローブをはらりと落とした幕開けのインパクトは、次はどうくる?この身体の見立てはこれだけでは終わらないだろうな、と考えるスペースを頭の隅に作ります。実際それは森山さんと吹越さんにも起こり、演者の身体を意識させ続けて舞台は進みます。


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12月15日(土)
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