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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『欲望という名の電車』
青年座交流プロジェクト『欲望という名の電車』@世田谷パブリックシアター

今年二回目の『欲望という名の電車』。『青年座交流プロジェクト』と言うことで、演出に文学座の鵜山仁さん、出演者に金内喜久夫さん、山本道子さん、塾一久さん、川辺邦弘さんを招聘する企画。鵜山さんは『欲望〜』オペラ版の演出もなさってるんですよね、観てみたいよー。

そして特別枠客演としてステラに神野三鈴さん、スタンレー(スタンリーじゃなくてスタンレーよ、今回)に宅間孝行さん。迎え撃つ?青年座はブランチに高畑淳子さん、ミッチに小林正寛さん。高畑さんが『欲望〜』に出演するのは三演目で、看護師、ステラときて今回初めてブランチを演じるとのこと。念願の役を演じるのが待ち遠しかったようで、今年始めに出ていたTV番組で「早くやりたい!」と話していたのが印象に残っています。

鳴海四郎訳で観たのは初めて。意訳や簡略、カット&ペーストが面白い効果を生んでいました。テンポよく間延びがない。具体的なところで言うとミッチの「南北戦争は終結ですか?」が「西部戦線異状なし、ですか?」になっていたり、スタンレーがステラに肉を持って帰って来る箇所が序盤ではなく、ブランチがスタンレーのことを「彼は野蛮人、いいえ人類以前の類人猿で、洞窟で待っているあなたに肉を持って帰ってくるのよ」とかむちゃくちゃ言った直後。これはウケてた。あと「アンブラー&アンブラー、クラブトゥリー」も出てこなかったな、取り立て屋の会社名と判らずスタンレー(と観客)が呪文か何か?と一瞬ぽかーんとするところ。タマーリ売りは出て来ないけど花売りは出てきて、こわれゆく女ブランチを死の世界へと誘う役割を担う。この花売りを演じる津田真澄さんは後に看護師の役でも登場し、やはりブランチの死を象徴する役回り。そしてラストシーンのステラはこどもを抱きしめて嘆き悲しむが、スタンレーの腕の中には戻らないヴァージョンでした。

どこに光をあてるかによって作品の印象が変わり、ストーリーと人物像の新しい面が見えてくる。インターミッションの挟みどころもカンパニーによってさまざまで、その違いも面白い。今回は「時には神様がこんなにも早く…!」の後。

今回のヴァージョンは、登場人物造形の記号化が明確だなと感じました。スタンレーはDVでステラはビッチ、ミッチは(セカンド)童貞。二面性もハッキリしてた。ステラは状況によって「ブランチ」「姉さん」「あんた」と呼び方を変え、スタンレーに金をせびる前後で態度ががらりと変わる。べそをかいたり無邪気にはしゃぐスタンレーはかわいらしくすら見える。ミッチは意識する女性とふたりきりになると豚のように鼻を鳴らす。各人の欲望の在処が見えやすくなり、その欲望は“夢中”と等価だと示す。

そして今回うわー!となったところはふたつ。ステラの、次女のノホホホホ〜ンっぷりがすごい出てた!次女だから解る、あのノホホンっぷり…女きょうだいがいる(≒男きょうだいがいない≒跡継ぎとしての男がいない)ひとにはピンとくるのではないか、あのきょうだいげんかの微妙なニュアンス……あるあるある!なんか今回そこがすんごいしっくり来たわー。姉ちゃんすまねえ!と心の中で叫んだわ(笑泣)。最後のシーンも、ステラは「やめてー!ブランチに何するの!」とかなんだかんだ言ってるけど、連れて行かれる=ブランチが死の世界へと旅立つ現場を見送ってはいないんですよね。これは「あなたはひとが死ぬところは見ないで綺麗な葬式にだけやってくる」と言うシーンに繋がる。


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12月20日(火)
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