ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『ラブリーベイベー』
『ラブリーベイベー』@東京グローブ座
いやあ、いい舞台だった…作家が若いんだなあと思わせられるところは多々あれど、書いていることに誠実に向き合ってる。出演者もそれに真摯に応え、丁寧に丁寧につくられた印象でした。そうやって差し出されたものには、こちらも素直に向き合える。
何度も交わされる「ごめんなさい」と「ありがとう」。どちらもわるくないのに。どちらも言葉だけでは足りない程感謝しているのに。相手をいたわり、相手を思いやり、彼らは何度も同じ言葉を口にする。とてもせつない、愛しい舞台でした。以下ネタバレあります。
セクシュアリティやジェンダーと言ったフックはありますが、「そのひと」のジェンダーがどうこう、と言う以前の「そのひと」そのものをどう愛しているか、どう愛するかを考えさせられる内容です。日本の法律では、男性と女性なら結婚出来る。生物学上の女性であればこどもが生まれると言う可能性もある。登場人物たち(特に恋司と愛斗)は社会的に普通とされることが出来ない。この障害を置いているので、彼らの「そのひと」を思う気持ちがよりストレートに解りやすく伝わります。そして、社会的な立場を除き個人対個人として向き合えば、どんな恋愛にも問題は皆無ではない。
個人的には旭はズルい(逆ギレじゃねーか)と思うし、遥はお芝居の登場人物としては観ていて楽しめるけど、傍にいてほしくはない(笑)。遥と香澄は共依存な感じもしたなあ。どちらも不器用ではあるけど、香澄はああやって遥に干渉され、激情をぶつけられることでしか自分が愛されていると言う実感を抱けないのかなとも思いましたよ…し、しんどい……。
と言う訳で、恋司と愛斗以外の人間模様で観ていてツラかったのは今日子と耕介。耕介は旭のことを気に病むことはないよー新しい彼氏はいいひとだし幸せになりな!と思いつつ、でもあんなことされちゃあさあ……旭ズルい!ヒドい!都合良過ぎる!と後味わるーいし、今日子はこれからずーっと遥と香澄を見て生きていくのか!そんなんつらすぎるわ……。第三者からするとあんな男(女)忘れてしまえよ〜新しい恋をしなよ〜とか思うけど、当人はそんなカンタンに諦めたり忘れたり出来るものではないでしょう。ヒー(泣)もうやだ。
どんなことがあっても最終的には感謝だけが残る、と言うふうになればいいけど、なかなかそうもいかない人生いろいろ。
恋司が一年かけて愛斗の死を受け入れる喪の仕事についてのストーリーでもあります。日々をだいじに。ささいなことのつみかさね。思い出は残る。留まっていてはいけない。どちらにも「ごめんなさい」の思いはあるだろうけど、「ありがとう」を伝えられたのは本当によかったよね……。
と言うように、すっかり登場人物を登場人物として捉えられたのもよかったです。終わってからはいやー伊達くんゲイ役妙に合うわーとか思ったものですが(笑)上演中はそういうことに気が散らないくらい集中して観られた。一途な思いを時とともに整理していき、その過程で生じる葛藤や悲しみと言った感情のうつろいをしっかり見せてくれた恋司役の三宅くん、先立つ者のつらさと相手を大事に思う気持ちを静かに体現してくれた愛斗役の菅原さん。『ラブリーベイベー』と言う小説のなかで生きる、小島さんの凛としつつも憂いを秘めた美しさも特筆ものでした。三宅くんと菅原さん、三宅くんと小島さん、どちらのラブシーンも美しかった。そして秘めた思いを全て呑み込む今日子役の吉本さん。これ演じるのしんどいだろうなー…素晴らしかったです。
線香花火、流星群等モチーフの扱いと、それにまつわるエピソードも丁寧に描かれてたなー。外の季節の移り変わりを伝え、鏡にもなりうる大きな窓の存在感もよかった。3階席迄線香花火の火薬の匂いが漂ってきたり、キスの音がハッキリ聴こえたりと、扱いづらいグローブ座の構造(音がものすごく響く、1〜3階席迄空間がスコーンと抜けている)を味方につけていた。どこ迄意識して作ったかは判らないけど、いい作品はこういう引きがありますね。
構造はシンプルだけど深い。ひとすじなわではいかない、余韻の残る舞台でした。いいもの観た。
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以下よだん(長い)
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11月10日(木)
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