ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『冷たい熱帯魚』『エロス+虐殺』
『冷たい熱帯魚』@テアトル新宿
園監督の作品を観るのは哲司さん主演の『夢の中へ』以来。その後『紀子の食卓』『エクステ』やらの比較的メジャーな作品や『時効警察』の演出を手掛けてたりして、なんだかオープンな感じになったのかしらと思っていたところ昨年『愛のむきだし』の評判がすごくて。
いんやー面白かった。これ迄観た「詩人が撮った映画」と言う印象ではなく(それも好きでしたが)「映画監督が撮った映画」になってた。でも詩人的な映像も沢山あって、それがまた美しくて。愛子がろうそくを灯すシーンとか綺麗で、あんな状況なのに(笑)ポワーとなったわー。そして役者への演出もきっちり目が行き渡ってると言うか。監督やん!146分なんですがテンポがいい、全く長く感じない。カット割りや編集がかなり細かくて、でもうるさくならず、観ていて気持ちがよいくらい軽快に展開する。エンタテイメントな作品に仕上がっています。爽快。
ここ数年で何があった…早くも新作出来てるようだし。寡作な印象がありましたがこれからバンバン撮るのかな、楽しみだ!
と言う訳でエンタテイメントとして観ました。劇場は結構笑いに溢れてました。でんでんさんの怪演っぷりホント素晴らしいですが、とにかく吹越さんの抑えの演技と反転する爆発力、そして黒沢さんの馬力がすごい。約10日間の出来事なんですが、内容が濃くて怒濤です。
それ迄の社本と、反撃に転じてからの社本のギャップがすごくいいんですよ…ひとあたりは悪くなく、星とプラネタリウムが好きでもの静かな社本。でも前妻を亡くしてすぐ巨乳の若い嫁を迎える辺り欲望の方向がわかりやすいので、観ている側に妙なモヤモヤ感を与えるんですよね。それが終盤ああなって、あっ本性出た!となる。
いや…本性出た、と言うより解放された!って感じかも。人間たるものそういうもんです。精神に異常を来している人物は出てこないと言ってもいい。滑舌あんまりよくない(何言ってるかわかんないとこも多々ある・笑)村田の話術にふらっと引き込まれてしまったり、強い方にすぐなびく女たちに愛嬌を感じたり。業だわー、共感出来るわー。愛と希望なんてないのです。地球はツルツルした青い星ではなく、ただのゴツゴツした岩なのです。ああこの台詞は詩人が書いたものだわーと思ったわー。
しかし最後の社本の行動はひょっとしたら社本の妄想なのかなと思わせられる部分もあって、そうなるとああやっぱり人間って束縛されたまま生きていくんだなあ、でも頭の中は自由だよねと思った。
あと家族についてもいろいろ考えさせられましたがこれは園監督の映画では毎回出てくるね…あっあれだ、ポール・トーマス・アンダーソン監督作品好きなひとはああっと思うところ多いと思う。お父さんとこどもの関係、とか信仰を服従と紙一重とする冷静さ、シニカルさとか。でんでんの説法、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の牧師を思い出したもの。
村田に「淡水魚が1,000万円と言うのは僕も高過ぎると思います」と言うシーン、嘘の証言を特訓させられるシーンの、吹越さんの落ち着いた声のトーンすごくよかった。おとなしさを印象づける演技があるからこそ、後半の狂乱が映える。殺人を目にして小さく震え続けるフッキーはうさぎさんのように可憐だったわ!
そして黒沢さん!ヘルムート・ニュートンの写真に出てきそうなヌードを持っている身体とは当時『六月の蛇』で彼女を主役に据えた塚本晋也監督のコメントですがホントそう、ばーんと拡げた両脚で大地をしっかと踏みしめるような力強さ、脚長い!そのうえかわいい…あの屈託ない笑顔で「あいよ!」「半分出来たよ!」なんて言われた日にゃあ。何が半分出来たかって、死体解体なんですけどね。パンフに書かれていたけど『攻殻機動隊』の草薙素子を彷彿とさせる髪型で、もう義体かってなセクシーコマンドー体型しかし過度なマッチョではない格好よさ。ここ迄くるともうジェンダーフリーダムで、すんごく女性を感じさせる顔声身体なのに、ストーリー中いちばん漢であった。バイトの娘たちを指導する厳しさ、戦況を見極める勘の良さ、解体の手際のよさ。いちばん頼れるわ…女的にはいちばんついていきたい人物だったわ(笑)。
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02月19日(土)
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