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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『犬とあなたの物語』『AKIRA』
『犬とあなたの物語 いぬのえいが』@TOHOシネマズ川崎 スクリーン2
レイトの『AKIRA』の前にもう一本観ようかね、楽しそうなものを気軽に、と観に行ったら気軽なんてとんでもないヘヴィーな内容で腰が抜けた。おーもりさんが出ているパート(長崎俊一監督)は重く厳しいストーリーです。
6話によるオムニバス。オープニングタイトルも出さずいきなり本編、あっと言う間にひきこみます。おーもりさんと松嶋菜々子さんの「犬の名前」がメインなのですが、その前後にいぬと人間のさまざまなエピソードが、デフォルメを加えられてテンポよく配置されています、相当おかしい(笑)。お笑い芸人さんが沢山出ていて、それも効果的でした。
「犬の名前」を観ている+観たあと、それらいぬとの楽しい暮らしの描写がジワジワ効いてきます。巧い構成。以下ネタバレあります。
「一郎!」「美里!」やたらめったら名前を呼び合う夫婦の会話で幕開け、アメリカ映画か(と言うより翻訳劇の舞台かな)と思う程の違和感。実はこれが仕掛けだったのだと後で気付くことになります。やってきたペットのラッキーは自分の名前を呼ばれないと振り向かない賢いいぬ。いぬを飼うことに後ろ向きだった一郎とラッキーが少しずつ心を通わせていく描写が丁寧。ほのぼのしさも然程なく、そっけないくらい。しかしあたたかみがあり、徐々にラッキーが家族の一員になっていく経過がとても微笑ましい。
一郎は若年性アルツハイマーに侵され、日々記憶を失っていきます。仕事に必要な英単語、自分の家、家族の名前……。いぬに餌をあげる習慣を憶えていても、いぬの名前を忘れます。ラッキーのことを自分がちいさい頃に飼っていたいぬ、ジローと呼びます。自分の名前がラッキーだとわかっているラッキー。ジローと呼ばれたラッキーは、それでも一郎に寄り添おうと歩いていくのです。
前の席に家族づれがいて、ちっちゃいおんなのこが時々ちいさな声で「かわいいね」「あはははは」なんて話していたのですが(迷惑ではなくむしろほのぼのしかったよ)、彼女がそのシーンのとき「ジローじゃないよ、ラッキーだよう」なんて言ったもんだから周囲のひとたち一気に涙腺決壊。おまっ何してくれる!嗚咽が出そうになったおえーい(泣)…映画館ならではのエピドードですな。ああ映画館で映画を観られるっていいなあ。
一郎の介護のため美里がだんだん疲弊していく様子がシンプルに重ねられていきます。過度にドラマティックな演出はない。仕事内容を軽減してもらう。会社も協力してくれる。しかし綺麗だった流し場にはいつの間にか沢山洗い物が溜まっている。一郎と美里は懸命に日々のくらしを維持しようとしますが、それはジワジワと崩壊していきます。「ああ、こうなっていくんだ、これはどうしようもない」と納得させられてしまうのです。
近くに助けを請えるひとがいなかったら?いぬを預けられる環境がなかったら?実際そういうひとの方が、きっととことん悩むのです。しつけが出来なかったから、大きくなってかわいくなくなったから、なんていい加減な理由でいぬを捨てたり殺したりするひとは、ペットが家族だなんて意識することすらしない。里親をさがす組織があるじゃんとつっこむひともいそうだけど、それに気付かない程美里は追い詰められていたのではないかと思います。
本当にそのことを考えているひとたちは、他人が知らないところで、黙々と行動している。ペットは家族です!なんて言うのは簡単だし、良識を振りかざすひと程裏にある事情を顧みていなかったりする。ひとりを助けなければならないとしたら?優先順位をつけなければならないとしたら?彼らはなんと言うのだろう。家族とは、絆とは責任とは覚悟とは、についても考えさせられる内容でした。
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01月22日(土)
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