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by kai
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■『じゃじゃ馬馴らし』『ソーシャル・ネットワーク』
どちらも膨大な量の台詞を演出と役者の力で魅せに魅せる作品でした。機関銃のようなテンポとリズム、すごかった!そして『ソーシャル・ネットワーク』にはシェイクスピア作品のような肌触りもあったのです。偶然とは言え同じ日に観たのは面白い体験でした。

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『じゃじゃ馬馴らし』@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

そもそも筧さんを蜷川演出作品で観るなんてまー、あったらいいなあればいいなと思ったことは過去何度もありましたが、今になって実現するとは。長生きはするもんだねー!と書いてからぴーとさんのブログ観に行ったら同じこと書いてた(笑)。

自分の好きな演出家と役者が組んでくれれば嬉しい、と言うのは勿論ですが、筧さんが出演するバリバリのシェイクスピア作品と言うのを観てみたいとずっと思っていました。あの詩的とも言える美しいリズムの台詞は質量ともに濃厚膨大。モノにするのはとても難しいが、乗りこなせるひとが口にすれば“語らず、歌え”の世界が開けます。筧さんは台詞のF1ドライバーなので、絶対絶対面白い筈ー!と思ってて。過去筧さんが出演したシェイクスピア作品ってOTTSの『真夏の夜の夢』くらいですよね?何故だ…とも思ってて。

いやー、ま・さ・に!あのスピード、あの滑舌、あのおかしみ(笑)最高だった。筧さんを観る度思うが、ホントこのひとは芝居の怪物だわ…。あの台詞をあのスピードで言って、何故全て聴き取れるのだと言う。バリバリにクリアです。しかも言葉の羅列にならない。意味も頭にズバズバ入ってくる。プラス今回はその意味をいちいち考えてる暇をこちらに与えない、そしてそれは「あーペトルーチオってイカレてるー!」と言う印象をこちらにクッキリ植え付けます。内容的にはおいおいってな酷いことも相当言ってるのに、まあこんなひとだから…で許される域の人物像にしっかりなってしまう(笑)。そして同時にいいことも言ってるんだ、キャタリーナを口説きまくる時の甘く真剣な言葉の数々と言ったら!そのどちらもが成立してしまうとなれば、喜劇の登場人物として魅力的でない訳がない。

この作品ってモロ男尊女卑の話ととられても仕方がない内容なんですが、清々しいとも言える後味。劇中劇と言う構造を仕掛けているのが効果的で、所謂男女の役割なんて喜劇なんですよ、それを自覚した上で、役割を演じているんですよ、と言う約束ごとを提示している。そして劇中劇に切り替わる前の「(芝居は)何よりもわくわくすることですよ」と言う台詞。男女の役割を演じることは喜劇で、なおかつわくわくすること。そう言われるとなんだかパンと心が開きます。オールメールキャストと言うのもキモ。男が女を支配する、女が男に屈服させられる、と言うこの作品の嫌な面が、演技として楽しめるものになってくるのです。

“じゃじゃ馬”を演じるのは、男性が女性を演じるプロ中のプロ。亀治郎さんの女形としての所作、貫禄は勿論素晴らしく、その上で端々に“男女の役割”からはみだした演技を見せることで喜劇をより多層なものにする。突然ドスの利いた声に転じる、時折腕っ節が“男”になる、視覚的にも“男”の身体を見せる。緩急自在です。そんな彼女が終盤見せる大演説の説得力。イカレたペトルーチオにこのキャタリーナ、お似合いのふたりに見えてくる。そして亀治郎さんがいることで、月川くんも浮き上がることなくのびのびやれていたように思います。この月川くん演じるビアンカも絶品。女性の美しさ、女性の傲慢さ、女性の底知れなさ。突飛な行動も愛嬌に彩られます。

劇中劇の役者たちが入場する場面、退場する場面もすごくよかった。出てきただけで面白いよ筧さんも亀治郎さんも…くくく……(笑)。この、音楽とともに登場人物たちが手を振り乍ら練り歩く場面には一種祝祭めいた華やかさと幸福感があり、ああ芝居っていいな、人間って面白いなと言った気持ちで劇場を出ることが出来ます。あの音楽、あの役者たちの笑顔。今でも思い出せるし、思い出すとこちらも笑顔になるなー。


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10月23日(土)
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