ID:43818
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by kai
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■有元利夫展、八月花形歌舞伎 第三部
有元利夫展『天空の音楽』@東京都庭園美術館

学生の頃同級生に教えてもらった有元利夫。その時貸してもらった『女神たち』はその後自分でも買い求め、今でもよく開く画集です。その同級生はグラフィックデザイン専攻同士だったのだが、有元さんの絵が岩絵具を使っていることにとても興味を持っていて、日本画についてもっと知りたいと言っていた。卒業してから会わなくなったが、今はどうしているのかな。

代表的な作品は勿論、芸大買い上げになった卒制作品(連作『私にとってのピエロ・デラ・フランチェスカ』)も半分展示されていた。『花降る日』『春』『厳格なカノン』もあって嬉しかった。いろんな本の装幀にも使われているのでポピュラーでもある。こういう作品がポップになりうるのも不思議なものだな、と思っていたが、有元さんは芸大卒業後数年電通に勤めており、制作ノートにも「商品としては…」と書いていたりして、意識的なものもあったのだなあと思う。

絵に登場する人物は、どっしりとした女性像が多いのにも関わらず、なんだかふわりと浮いているように見える。モチーフとして使われる花弁、球体、布らしき薄い板状のものも、常にふわふわと漂っている。絵の中に躍動感は一切ない(と言うより意識的に排除しているのだと思われる)のだが、そこには風の存在を感じる。

その風は“風化”の風なのだろうか。最初から風化を目指している、と言うか、風化したものが本来の姿と言ったような絵の数々。その風化を一刻も早く見たい、とでも言うように、有元さんは若くして亡くなってしまった。遺された作品の数々は、今でも風化することなく愛され続けている。時間が止まっているかのような庭園美術館で観られたのもよかった。

下描きやメモ類が観られたのも面白かったな。何故かほうれん草のチャーハンのレシピとか詳細にメモってるの(笑)思わず憶えて帰っちゃった。

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八月花形歌舞伎 第三部『東海道四谷怪談』@新橋演舞場

勘太郎くんのお岩が素晴らしくてもう恐れ入りました。おまっなんでそんなに女心が解るねん!とすら言いたくなった。いや、女心だけでなく…愛情を失うこと、信じていたものに裏切られること、自分のアイデンティティを喪失すること、そういう負の感情をこのひとはどこで得てきたのだろう?なんてことすら思ってしまった。普段の勘太郎くんは見ての通り(と言っても自分たちは本当の素の勘太郎くん=波野雅行さんのことなど知る由はないのですが)明るいキャラクターでまっすぐなイメージですけどね。恐ろしい役者さんです。以下まわりくどいのもなんなのでもういきなりネタバレです。

とにかく二幕目第三場、『元の伊衛右門浪宅の場』に尽きます。容貌の変わったお岩が伊藤家へ向かうべくお歯黒を塗り髪梳きをする場面。圧巻です。演舞場静まり返りまくり。その前の薬を毒と知らず感謝して服む場面は勘三郎さんを彷彿とさせる型で、こちらも素晴らしかったのですが…いやー……髪梳きはもう有名な場面ですが、お歯黒塗る場面から涙したのは初めてだよ私……。

失礼な話だが、この辺りって大概宅悦がお岩の顔見る度に「ひいっ!」とか「ぎゃあっ!」とかすごい騒ぐ演出じゃないですか。そこで笑いが起こるのも常で。今回もそうだったんだけど、お岩の怒りと悲しみの表現が凄まじくて、宅悦の反応を鬱陶しく感じた(笑)もうおめーうるせーよ!お岩可哀相じゃんよ、もっと気遣えや!とすら思った(笑)市蔵さんごめんなさい。いやでもあの場面に笑いを挟み込む必要はないと思ってしまったよ…それ程迫真の場面でした。


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08月14日(土)
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