ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『天才セッター中田久美の頭脳(タクティクス)』+α
何故かスポーツものを数冊同時読みしています。この手の本って、

1. 同業者が参考として
2. 同業者じゃないひとが自分の仕事に応用出来ないかと
3. ファンが「あの勝利・敗北の裏にはこんなドラマがあったのね!」と
4. ファンがより戦術を理解し、ゲームを楽しむために
5. 著者の自慢話として

てな感じで読まれるのではないかと思われます。で、発行されてすぐ読むのとしばらく経ってから読むのとでは印象が違って来るものもあります。スポーツですから現役を続けている限りいずれ負けたり、華々しく引退したけれどその後スキャンダルを起こしてこれ迄のキャリアを台なしにしたり。革命的な戦術が発案され、書かれていた内容自体が無効になる可能性もあります。

著者や編集者も、読者層を想定していると思います。スポーツのジャンルによってその読者層の想定は違います。チーム競技と個人競技の違いもあるでしょう。実技専門書は、また違う狙いもあります。

過去読んだものからすると(タレント本の類は別として)、サッカーは3、4、ラグビーは2、4が多い印象。で、バレーボールは圧倒的に3と5が多い。3はどのジャンルにもあるものだと思いますが、バレーはとにかく多い。他とは比べ物にならないくらい多い。5は金メダルをとれてた頃を振り返ってと言うものばかり。これら以外のものが読みたくても、殆どない。

「痛み止めを何本も打って試合に出た」「鉄拳制裁あたりまえ」「だって涙が出ちゃう、女の子だもん」。うんうん、それはそれですごいなーと思うよ。でも、読みたいことは、何でそうなったのかと言うこと。知りたいのは、何故、日本のバレーボールはこんなにダメになってしまったのかと言うことです。

ここ数年で、少しずつ2、4が書かれたバレーの本が増えてきました。読者層の想定に変化があったと言うことでしょう。主に女子。男子はもう出版すらされませんよ…。商売にならないからね(身に憶えあり)

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■『天才セッター中田久美の頭脳(タクティクス)』二宮 清純

「セッターは特にくさっちゃうことってありますからね。負ければ全部、わたしのせい。勝っても目立たない。それはそれでそう思ってくれって。自分は納得してやってるからいいんだぜ(笑)」と言ったのは富士フイルムのセッター・池永選手。バレーボールは予測のスポーツ。コンビプレーの読み合い、コースの読み合い、サインから試合前の選手の顔色から、何手も先を読んでの頭脳ゲームが繰り広げられます。これがバレーボールの醍醐味。特にアタッカーを操る司令塔・セッターには、コート上の時間と空間を掌握する頭脳・技術が必要です。

今では怖い姐さんなイメージの中田さんですが(笑)ほんっとすごい選手だったんですよ。あのブロックを振りまくるトスワーク、相手選手がビビる程の闘争心。流石に“東洋の魔女”は知らない世代なので、「強い日本バレー=情報をいかにスピードとコンビネーションに載せるか」を見せてくれたセッター、と言うとまず中田さんが浮かびます。天才天才と言われてますが、努力してこその天才です。センス一発とか思うなよ。

この本は、著者・二宮さんと中田さんとの30時間に及ぶ対談から、'80〜'90年代の全日本と、その全日本のメンバー殆どが所属していた日立チームの戦術紹介、試合にピークを持って来る為の精神的なトレーニング方法、若手の育成方法等多岐に渡ったバレー論・スポーツ論が展開されています。間に二宮さんのコラムが挿まれ、バレーと他競技の現状、企業スポーツへの提案等が書かれています。バレーだけでなく、他競技に関わるひとも興味深く読める内容です。前述の割り振りだと、1〜5全てに当てはまるくらいにいろんな読み方が出来ます。

ヤクルトの古田捕手の制球術を紹介していたところが面白かったな。入来投手とバッテリーを組んでいた時、力むと直球にシュートがかかると言う癖を利用して、ここぞと言う時に直球ド真ん中のサイン→いりきぼうずが「えっ、なんでこんな時に!?」→力んでシュートかかる→凡打でゲッツー!と言う(笑)。コンビを組む打ち屋の癖と、対面になっているセンターの癖を把握した上でトスをあげる、セッターの想像力・創造力に繋がる発想です。


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01月29日(土)
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